Knightの手を静かに離して
父は米国軍人、母はイタリアの看護師。
私は父に憧れて、軍に入ったの。
兵士だったときの私は、それなりの武勲をあげた。
腕が良かったから。度胸もあったから。
「殺す!殺す!」って何度も叫んで殺意を知る訓練をして、いっぱい敵を殺したわ。
男も女も子供も、武器を持つやつは、みんな敵だから殺したわ。
それこそが私に栄光を与えてくれた。
戦場では、沢山殺したもの勝ちだから。
ああ…でも戦況が落ち着いて帰ってくる直前が悲惨だったの。
でも貴方以外、誰もこの話をまともに聞いてくれないのよ。
敵が私のまわりに息を潜めていたらしくて、沢山でてきたの。
そいつらが私の部隊の人を殺したのに、私が殺した殺したって言うから、私は全て失った。
拘束されて帰国したら、すぐに病院にぶちこまれたの。
両親も上司も医者も、ガラクタでも見るような目で私を見てきて、勘当されて…逃げるようにして、裏社会に。
「…今ならわかるの。私はあの時から、すでに頭がおかしくなっていたのよね」
「ああ、そうだろうな」
「でも、頭がおかしくなったのは私のせいじゃないのに、酷い仕打ち……でも、楽にいられる居場所ができて、イルに会えたのはそのおかげだから、感謝するべきなのかしら」
鏡の中の反転世界ならイルの許可したもの以外は入り込めないからか
私の妄想、幻視、幻聴症状は軽くなる。
イルが敵を入れるはずがないという安心感で、不安や恐怖が少なからず解消される。
「…私ここまで堕ちてきて良かったわ」
そう言えばイルは、少し照れたようだったけど、頭を撫でてくれた。
やっぱり手放しがたいくらい心地が良くて、まだここにいたい気がしたけど
だからこそ、忍び寄る影を消しておきたいと思った。
「(まわりには悟られないようにしないと)」
to be continue…