悪戯Kittyは、許されない
「人が死ぬと、不思議とわかるような雨が降るの」
「…ソルベとジェラートのことか?」
「ええ…血と死の匂いをかき消すような雨が降るの」
アフガニスタンでの紛争の時にも、こんな風にひどく湿気た、重い雨を感じた。
それが仲間の死だったか、敵の死だったか、私の妄想の中かは、もうわからないけど。
そう言って、鏡の外の窓を隈のこびりついた目で見つめるストーリアは、チームメイトであり、俺の恋人。
そして、元米兵で紛争に行かされてたらしく、戦争神経症を患ってもいる。
どこまでが妄想症状で、どこからが現実の話か、時にわからなくなるが、今回は現実の話らしい。
数日前に、ボスによって処刑された2人の死を思い返しながら、会話を進める。
「ソルベとジェラートの死はたしかに悔しいが…首突っ込んだりしたらお前までやられるぞ」
「…そうね。でもやっぱり…いいえ、なんでもないわ」
なにか言いかけて飲み込むストーリアに、少しの不安を覚えたが、今はこれ以上会話をしている場合ではないし、と
「…今夜はまた薬が必要そうだ」
「ええ、それに…イルの鏡の世界も必要そう」
きっと外じゃ、安心して眠れないから。
少しかさついた唇がうっすらと弧を描く。
自嘲するような、疲れたその微笑みに、目を細めて笑みを返す。
「お前なら許可するさ、俺のアリーチェ」
to be continue…