足を踏まないように慎重に

「…ねえドッピオ、これはとっても簡単な質問よ?ディアボロはどこに行ったのかしら?」

「さ、さあ…?」


目の前でびくびくとしている、私が現在探している馬鹿な男とは似ても似つかない、ピンクの髪の少年、ドッピオに笑う。

勿論、この子が彼のもう一つの人格だと私は知っているけれど、本人にしてみればその事実は知らないことだから今はどうでもいい。

それに、中の彼にも私の声は聞こえているだろうから、中で聞いて震えていたらいいんだわ、引きこもりめ。


「浮気がばれたからとりあえず逃げるなんて、最低だと思うのよ」

「で、でもラスト様。ボスはそんなつもり無かったんじゃないかと」

「そんなつもりがない浮気なんて、男の言い訳のなかにしか存在しないわ」


ついこの前、信頼の話をしたばかりだと言うのにこれか。

ギャングになる男の甲斐性だと言えば、そうかもしれないけれど…

そこまで考えて、深く息を吐き出す。


「別にね、浮気そのものにはそこまで怒ってないのよ…ただね、行動が迂闊すぎない?」

「……はあ…」

「余計な過去はいらないだとか、前にさあ…自分は慎重な男だとか言ってたのは誰だっけ」

「……すまん」

「ようやく出てきたわね、ディアボロ」


ドッピオの雰囲気が変わったのを見て、ディアボロがログインしたことを悟る。

病的なまでに過去や他人に対して臆病な男。

そのくせに、一般の女と遊ぶなんて馬鹿だわ。


「…子供でもできたらどうするの」

「…一晩だけだ」

「子宮や卵子に問題がない女は、一晩でも妊娠可能なのよ。馬鹿ね」


私とは違うのよ、と下腹部を抑えながら言えば、目を泳がされた。


「…だ、大丈夫だラスト。滅多なことは起きない」

「…ならいいけど……しばらく私に触らないでね」

「!?」

「他の女を鳴かせた手で触られると思うと、吐きそうになるわ」


呼び止めようとする彼を無視して、買い物に行こうと部屋を出る。

バールで甘いドルチェでも頼んで、顔も知らない女や彼の軽率さへの怒りは発散しましょう。

私は、私自身や彼が思っていた以上に、どうやら彼を好きなようだわ。


to be continue…



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