まずはお辞儀を

エジプトの砂漠を照りつける太陽が、私の白い肌を痛いほどに焼く。

きっとまた、風呂に入ったら真っ赤になって痛いだろうし、水ぶくれも出来る。

酒代のために娘をこんな強制労働に送り出す親父なんて、罪にならなかったら殺してるわ。


「もう!ほんと最低!」

「そこのバイト!サボッてんじゃねえぞ!」

「(チッ)はーい…すいませんー!」


不満だらけだけど、泣いても怒っても、私はなんの力もない掃き溜めの人間。

それが決められた運命なら、耐えるしかないのかしら?

その決められた中で、喜びを見つけることしかできないのかしら?

だとしたら、なんて理不尽なのだろう。


「…ねえ?そうは思わない?」

「いいからそっちを持て、ラスト」

「はいはい、っと…はあ、人生で一度でいいのよ。人の上に立つ人間になって、贅沢な暮らしをしてみたいわ」

「…なる気はないのか?」

「いつかはなるつもりよ。でも、こんなところで汗臭いバイトしているような身の上じゃ無理。花実も咲かないわ」

「…俺が叶えてやろうか?」

「同じバイトの身の上でなにをいってんのよ」

「今はな」


笑い飛ばそうとすれば、冗談には聞こえないような短いセリフに思わず一度閉口する。


「…なあに、口説いてんの?それ」

「そう聞こえるならな」

「……まあ、あんたならいいかもね。あんたが人の上に立てそうなら考える」


悪い話ではない同僚のピンク頭の与太話に、生ぬるい肯定を返した。


to be continue…



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