ダンスホールには、2人だけ

長いような短いような年月が過ぎた。

作り上げた、ギャング組織パッショーネも

彼の強さと、一本だけ手元に残した矢でできた、麻薬を作り出すスタンド使いのおかげで、イタリアを牛耳る一大ギャングになった。

幼い日に憧れた絢爛豪華な調度品に、きらきら輝くアクセサリーに宝石!

ふかふかのベッドで眠ることだってできる。

安全安心なまま、こんなに素敵なものばかりに囲まれて生活できる日が、本当に私にもくるなんて。

もう汗まみれになって肌を焼く仕事に、明け暮れることもない。

呑んだくれなクソみたいな親父に、殴られたり悩まされることもない。

貧乏人だとか、社会的弱者だとか、馬鹿にされもしない。

紛れもなくディアボロと私は、頂点に立った。


「幸せの絶頂だわ…」

「ラスト」

「…なあに、ディアボロ?」


隣からかかった声に、枕に埋めていた顔を向ければ、髪を指先で弄られる。


「満足したか?」

「…したわ。やっぱり貴方についてきて大正解。でも、まだ足りない…まだまだ欲しいわ。いろんなものが」

「ふ…欲深だな」

「今さらじゃない?ついでに貴方のセンスを変えるのも諦めてないから」

「まだ諦めてなかったのか」

「当然よ」


ふん、と鼻を鳴らせば不満そうな顔をされたあと、また名前を呼ばれた。

今度は低い、言い聞かせるような声音。

ああ、帝王様のおなりだ。


「…なにかあったの?」

「少々問題が起きた」

「あら…裏切りかなにか?」

「…いや、我々のことを探っているものがいるらしい」

「…それは…困ったことするわね。どうするの?」

「たどり着かれる前に、消すしかないだろう」


その言葉に、やっぱりねと思いながら、頷く。


「で、その命知らずはだあれ?」

「J.P.ポルナレフ…矢の秘密も知っている厄介な男だ」

「…ふうん…消すときは私も行くわ…」

「私一人でも十分だが」

「…慢心こそ敵。2人の方が、安全安心だわ」


一度でも地位にヒビが入ることがあれば、たちまち崩れてしまいかねない。

それは避けなければ。

ディアボロの髪を撫でながら、囁く。


「確実に、始末しなきゃ」

「…わかった。ついてこい、この私に」

「勿論よ…私の帝王様」


二人で手を取り築いたこの頂きは、誰にも突き崩させはしない。


end



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