「にこやかにステップしないで」
まるで私の恋人のように、横を幸せそうににこにこへらへらしながら歩く彼は
もう随分と見慣れた変態マスクストーカーのメローネだ。
見慣れたストーカーって時点でもう全てがおかしいけど、実際そうとしか言えない。
暇さえあれば、呼んでもないのに気配も音もなく私のそばに現れるし、鍵をかけても無意味に等しいから、つっかかるのに疲れたのもある。
「…もう、隣でにこやかにステップ踏むのやめてよ」
「ラウラの隣を歩けてる事実を、噛み締めてるんだよ」
「噛み締めなくていいからメローネ」
「あぁん!ラウラが俺の名前を呼んでくれる喜びッ!!ベネ!!」
「名前呼ぶくらいしてあげるから!往来で悶えないで!!」
自分の身体を抱きしめるような不審な動きをするメローネに頭が痛くなる。
顔は綺麗だし、声も素敵なのに、服装と性格が全てを無に帰している。
本当に残念な美形っていうのが似合う変態。
「(天は二物は与えないんだな…)」
サントチェーロ。
叶うならば彼にもう少しまともさをお与えくださいな。
ため息を一つ、吐き出した。
to be continue…