略奪のきざし


目の前で俯きがちになって、グラス拭きの作業に没頭するラウラ。

角度的に伏せ目がちになるのが、たまらなくイイものに見える。

身体の肉付きもほどほどで、抱いたらきっと抱き心地がいいんだろう。

あの変態も、こういう全部にやられたのか。

地味そうに見せていた姿も変貌し、今なら存外、悪い趣味じゃなかったといえる。


「…どうかした?プロシュートさん」


伏せられていたローズピンクの丸い瞳が、戸惑うよう俺を捉えた。

不審がられるほど見ていた自覚はねぇが、視線が絡む。


「いや…なんでもねぇが真面目に仕事する姿が珍しくてな」

「失礼な…私はいつも真面目だよ」


尖らせた唇はふっくらと熟れていて誘っているようにも見えたが、なんでもないならと言うように、また作業に戻っていった。

柔らかそうでエロい肉付きの身体が動く姿を見ながら、変態にやるにはもったいねぇ女だと漠然と感じた。


「…なあ、ラウラ」

「んー…?なあに?」

「メローネとは…最近どうなんだ?あいつの話は9割自分に都合がいい捏造だからよぉ」

「…別に特に変わりないよ」


相変わらず、と口にするラウラは嘘を言っている感じではなかったが

名前を出した際にほんの少し垣間見せた色気に、身体は知った仲かと勘が働く。

メローネに押し切られたんだろうな、と思いながら

いい女の原石を見つけて、なんの邪魔もなく手に入れようとしているメローネへの羨ましさが募る。


「…変態に好かれるのも困りもんだな」

「今更すぎないかな?その感想は」

「メローネより俺の方が断然いい男だと思うぜ?」

「…?まあそうでしょうけど…今日はおかしなこと言うね?酔ってる?」


心配するようにカウンター越しから伸ばされた片手を掴んで、手の甲にキスをする。

ラウラの身体が跳ねて固まるのを感じ、思わず笑みが漏れる。


「…可愛い反応だな、シニョリーナ」

「の、飲みすぎ!飲みすぎだよプロシュートさん!!」


自分でも驚くほどするりと出てきた台詞だと思うが、飲みすぎで片付けようとするのはどうかと思う。


「いいや酒には飲まれちゃいねぇさ…正気だ」

「正気だとしたらますますどうしたのってなるんだけど」

「ん?そりゃあラウラ…お前をメローネにやるのがもったいねえのさ…もっと簡単にいうなら、お前が欲しくなった」


お前は飯も上手く作るし、気の利くいい女だと捕まえた手の指に指を絡ませ、見つめ返せば

ラウラは口元を抑え、顔をトマトのように真っ赤にしていた。

なんだよ、そんな顔をすんのか。ますます悪くない。

メローネには本当にもったいねえ女だ。

手を握ったまま、席から立ち上がって、カウンター越しに熟れた唇にキスを落とした。


「…どうだ、ラウラ。メローネじゃなくて俺にしといてみねぇか?」

「え、ええええ!?」


end

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