call me maybe


ラウラに携帯を渡した。

このご時世にまだ携帯を持ってないなんて、連絡がとれなきゃ不便だろうにと思ったが

ラウラには特に外で連絡をとるべき相手なんかいないことに気づいて、そこで考えるのをやめた。

別にラウラに連絡を取る相手がいないなんてことは大した問題じゃないし、そもそも俺がラウラと連絡を取りたくて携帯を渡したんだからどうでもいい話だった。

とにかくね、携帯を渡したんだよ。

最初はラウラは嫌がって突き返してきたけど、忘れたように家に置いていくのを繰り返していたら諦めてくれたようだった。

だが1つ問題があるんだ。

それはラウラが、一向に携帯を使ってくれないこと。


「携帯での電話のかけ方は教えたのにかけてくれないんだ」

「それ普通にお前にかけたくないだけだろ」

「だが電話もとってくれないんだ。最近は毎日10分ごとにコールしてるのに」

「そんなの俺なら電源切って捨てる」


辛辣な仲間の言葉に机の上の携帯を見つめるのをやめて、わっと顔を覆う。


「なんでそんな否定的なんだよ!ひどくない!?」

「酷いのはお前の行為だよストーカー」

「痛ッ!やめろよチンピラジジイ!」

「だれがジジイだ。ラウラにいつも叩かれてるのに比べりゃ可愛いもんだろ」

「ラウラはいいんだよ!!あれも愛だから!!」


だいたいプロシュートの足癖の悪さと、可愛いラウラの攻撃的な俺への感情表現を一緒にしないでもらいたい。


「とにかくラウラに電話してもらいたいんだよ俺は」

「うざってぇくらい会いにいってんだからいらないだろ」

「いいや!いるね!!ラウラのぽやっとした甘い声を耳元で聞きたいっていう俺の願望を手軽に叶えてくれる電話ってすごい!!なんて便利なツール!!」

「お前とチームなのが悲しくなってきた」


長いため息が背後から聞こえてくるけど聞こえないフリをして再び携帯に目を落とした瞬間、着信音が響いた。

その着信音に仕事の時よりも素早く携帯を取り、通話ボタンを押す。


「Pronto!ラウラ!?」

『あっ…メローネ?』


求めていた電子音混じりの、控えめな鈴のような声に耳元から犯され、脳髄をかけめぐる興奮に発狂しそうになるのをぐっと耐えて、そうだよと返事を返す。

電話だけでここまで興奮することがあったかな。いやないな。ラウラだけだ。

気持ち悪ッてイルーゾォの声が聞こえた気もするけど今はそれどころじゃない。


「ようやくこの携帯使ってくれたんだね!」

『あーうん。そうなんだけど…あのね。この携帯ね、やっぱり返したいの』

「!?なんで!?」

『だって…これの支払いとかメローネでしょ?それは嫌だわ。だからね…』

「ラウラは気にしなくていいって!大した額じゃないし!!それに俺がラウラと電話したいだけだし、それともラウラそんなに俺と電話したくないのか!?」

『そういうことじゃなくて、私自分で携帯買ったの』

「……え?」


拒絶、じゃあない思わぬ言葉に俺はらしくもなくキョトンとした。


『メローネからのこっちは貰えないけど、まあ連絡は確かに取れた方が今の世の中安全だし......だけど機種が違うせいか使い方がイマイチわからないから、仕方なくこっちでかけたの』

「あ...そうなんだ...そうだったのか...」


ラウラの律儀さと愛らしさに、ニヤニヤと口角が上がる。

きっと電話口のラウラは今、俺に呆れながらも、慣れないことをして頬を染めてるんだろう。

なんて、なんて可愛いんだろう。

これが尊いってやつか。


『そうだよ。だから別に貴方と電話したくないとかじゃないし......とりあえず今時間あるなら、新しい携帯の使い方教えにきてくれない?』

「!俺に教えてもらいたいの!?俺に!?」

『...貴方が一番詳しいんでしょ?こういうの』

「あ、うん!!!すぐいくから待ってて!!!!!!5分でいく!!!!」

『いいよそんなに急がなくても』

「いや急ぐさ!君からの待ちに待ったラブコールなんだからね!!」

『ら、ラブコールじゃないけど!』

「君からのコールは全部俺にしてみたらラブコールだから!」


やっぱり携帯って人類最高のツールの一つだね!!


end


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