Missing you


ストーリアさんが、店にこなくなった。

ソルベさんとジェラートさんが…その、いなくなってしまって、少し経ってから。

皆は、足を洗って、遠くの精神科に入院することになったと言ったから、残念だなって俯くだけにしたけど

きっと違うんだろうなって、わかってるの。

だってストーリアさんは、あんまり口にはしないけど仲間想いだって、私は知ってる。

だから絶対みんなと同じ場所から離れて行ったりしない。

それに、元気がないイルーゾォさんを見てたらわかる。

ストーリアさんも、多分いってしまったんでしょう?

ソルベさんと、ジェラートさんと同じように、二度と会えない場所に。


「……どうして、ストーリアさんも連れて行ってしまったんですか…?」


子供の頃によくやってきた、すっかり寂れてしまった廃教会の前て屋根の十字架を見上げながら両手を組んだ。

私のたくさんの重ねてきた祈りは、いつ聞き届けられるんだろう。

一つくらい、早く叶わないだろうか。


「…dio mio…」

「…ラウラ?」

「!イルーゾォさん…?」


かけられた声にぱっと横を見れば、やっぱりいつもよりずっと血色が悪いイルーゾォさん。

でも、彼が教会にくるなんて、なんだか意外だ。


「どうしてここに…」

「お前こそなんでここに…!(まさか知ってるのか…!?)」

「?私はキリスト教徒だから、小さいときにはよくこの教会にきてて…今日はたまたま…」

「……本当か?」

「うん」


なぜかピリッとした空気を感じて戸惑ったけども、事実しか言ってないので頷けば、少しの沈黙のあと、イルーゾォさんの空気がまた少しゆるんだのを感じてほっとする。


「…また紛らわしいときに来るもんだな」

「え、あ、ええと…ごめん?」

「まあいいさ…」

「ところで、イルーゾォさんこそ教会にくるなんて…意外。お祈りするの?」

「しねえよ。するように見えんのか?」

「あ、やっぱりしないんだ…じゃあなんで教会に?」

「………別に、単に通りかかっただけだ。それよりお前は帰った方がいい、ラウラ。もう暗くなるし、またメローネみてーな変態がでるかもしれねえ」

「んー…そうだね…それはやだし、帰るよ」

「そうしろ」


イルーゾォさんの言葉を受けて、たたっと走りだそうとしたところで、ちょっとだけ言おうと思ってたことを思い出して振り返る。


「イルーゾォさん、元気出して…ご飯もちゃんと食べてね?ストーリアさんも、いつもの貴方が好きだって言ってたから、きっと体調崩したら悲しむと思う」

「!」

「だから…また店にご飯食べに来てね。私は、ストーリアさんの代わりなんかにはならないだろうけど…暖かくて、栄養のある食事を出すことはできるから!」


チャオ、と告げて返事を聞く前に走り出す。

愛しき神様。

あなたが今はまだ私の祈りを聞いてくれないのなら…

私は、あなたにはできない方法で彼らの力に少しでもなりたい。

ギャングの人だとしても、あなたに祈らないだろう人たちでも

それ以上に、私には大切な人たちだから。


end

 

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