毒の夜に、甘い朝


私とメローネは恋人じゃない。

でも、私を好きだ好きだと煩いメローネには、沢山そんなことを言う相手がいる。

ただそれだけの事実が、私にこんな悪事を働かせた。

お互いの唾液が、離れた唇を繋ぐ。

こんないやらしい光景は、マスクの彼との行為で幾度となく見てるけれど、やっぱりまだ見慣れなくて顔が熱を持つ。

しかも今日私を下に敷いてるのは、彼じゃないのだ。


「は、ぁ…プロシュートさん…やっぱり、こんなの……」


胸を押し返そうとしたら、顎を掴まれて、端正な顔と向き合うことになり強い視線が交わる。


「ここにきて怖気付くんじゃねえよ…それに、別にメローネの奴に対して罪悪感はいらねえさ」

「そうは、言っても…」

「嫉妬ばっかさせられてんだろ?なら同じことをしてやりゃいい」


服を、いつもの彼より少し乱暴に乱され、首筋をなぞるようにキスを送られながらぼんやりと、一時間ほど前にふらりと誘いに頷いた自分を少しだけ後悔した。


「(別に私がこんなふうに違う人に抱かれても…メローネは気にしないだろうなって…わかってるのに…)」


変な嫉妬して…プロシュートさんの浮気…になるのかな?とにかく、こんな誘いに結局甘えて…プロシュートさんに一番失礼なことしてる。


「…おい、泣きそうな顔してんじゃねえよ」

「だって…プロシュートさんを、利用してるみたいで」

「!…馬鹿だなあ、おめーはよォ…俺が状況を利用してんだ。お前が俺に寝取られちゃくれねえかと期待してな」


だから、お前を抱かせてくれ。

そんな真剣な目でそんなふうに言われて、とろけそうなキスをされたら

甘えたでずるい私は、もう黙って背中に手を回すことしかできなくて、


「(私も、悪い子だなあ…)」


***


カーテンの隙間からこぼれてくる朝の光に目を開けて、少しだるい身体を起こす。


「…はあ…(ほんとにやってしまった…)」


ぼさぼさに乱れた髪をなでつけつつ横を見れば、いつも見る金髪とはまた違った金の髪を持つプロシュートさん。

いつもキリッとパリッと決めてる人だから、なんだか気の抜けたこんな姿が新鮮で、こんな爛れた状況にもかかわらず笑ってしまう。

すると笑い声に起きてしまったのか、薄く彼が目を開けて、一拍置いて驚いたような顔をした。

なにをびっくりしてるのかな?


「…お前…俺より先に起きたのか…?」

「うん、ちょっと前にだけど…」

「まじかよ…(この俺が気ィ抜いて寝こけてたってのか…)」

「?どうかした?」


尋ねれば、なんでもないと手をふられた。


「久々にぐっすり寝れたもんだからな…」

「そうなの?」

「おう…人の隣じゃ落ちつかねえから尚更な……多分お前だったからか…」

「それは…喜んでいいのかな…?」


身体を起こして気だるげに頭をかくプロシュートさんの言葉に困ってふにゃと笑えば、当然だろとぼさぼさのままの髪を撫でられた。


「お前はやっぱり最高だな、ラウラ…夜もよかったしよ…またしようぜ」

「ま、また…!?」

「メローネから寝とりてえって言ったじゃねえか…あれは本気だぜ。お前が欲しい」


だから、またよろしくな。

そう言って前歯を見せて笑って、頬にキスをしてくるプロシュートさんに

私の特に冴えもしない人生に、不思議なモテ期が到来したと、少しの照れ臭さと罪悪感。

とりあえず考えても仕方ないし、早急に朝ごはんにしよう。

お腹が空いていること以上にろくなこともないだろうから。


「プロシュートさん、朝ごはんはコルネットとエスプレッソでいい?」

「おう…あ、いや待て。コルネットは、」

「甘さ控えめ、でしょう?好みぐらいわかってるよ」

「流石だ。惚れ直したぜ」

「…はいはい」


end

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