存在証明シャッター音


ぱしゃりぱしゃりと絶え間なく響くシャッター音。


「メローネって私の写真撮ってばっかりよね」

「あ、気になる?」

「そりゃ…横でシャッター音鳴らされてたらね」

「気にしないでいいよ。自然体でいて」

「…カメラ好きなの?」

「別に?でもラウラを撮るのは好きかな…まあラウラくらいしか、俺の近くには被写体がいないのもあるけどね」


大げさに肩をすくめたメローネに首をひねる。


「なにそれ?同僚がたくさんいるじゃない」

「そうだけど、あいつらを撮ってもね。そもそも撮らせてくれないし」

「あら…みんな写真嫌いなの?」

「…まあそうかな」

「ふうん…それじゃあ思い出も残さないの?」

「そうだね、撮れないし撮らせないから。その点ラウラは良い。撮らせてくれる」


そしてまた一枚、とシャッターを押したメローネに苦笑する。


「勝手に隠し撮ってるだけじゃないの…もう。私より風景とか撮ったら?その方がきっと価値があるよ」

「それは綺麗な景色があるところへ行こうってデートの誘いかい?」

「なんでそうなるの」

「…わかってないなラウラ。君が映ってない写真には価値がない。俺の人生で一番価値があって、残していたいのは君のいる景色なんだ」


目を細めて、柔らかく笑うメローネに不覚にも少しどきりとする。

美形とはずるい。


「(…時々ストレートに口説かれるとドキッとするんだよなあ…)」


再び視線があわない位置から、規則的に切られだしたシャッター音に息を吐き出した。

こんなに撮られてると、モデルにでもなった気分だ。


「…メローネが写ればいいのに」

「いいんだ。ラウラの写真があれば、俺もそこにいた証になるから」

「また変な理論…自分が映った方がなるでしょ」


貸してよ、とカメラを奪おうとしたらひょいと届かない位置に掲げられた。


「ダメだよ…俺も写真は嫌いなんだよ。だからラウラが俺の証明になって」

「なによそれ!私だってそんなに映るの好きでもないよ!?」

「ラウラをこんなに好きで撮るの俺くらいだから丁度いいじゃん?」

「あっ!ひどいこと言われた気がする!!」

「はは、ひどいことなんか言ってないよ」


(君を撮った写真に俺は映れないけど、撮ったのは俺だという証明にはなるだろう)

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