Posso aiutarla!


がたがたん

星しか頼る明かりがない中、生ゴミいっぱいのゴミバケツをゴミ捨て場まで引きずり、ようやく放り込む。

私が働くリストランテの裏口の石畳は、このバケツの引きずったあとですり減ってる。

綺麗な街の路地裏は、きっと大体こんなもの。

私も綺麗の裏側の一人、なんてなんとなく笑えてくるあたり、私もすり減って疲れてるんだ。


「はは…、はあ…」


最近はため息ばかり吐いてる気がして、夢のために中卒した意味を改めて考える。

おいしいものを作って、人に振る舞える料理人になりたい。

それが私のたったひとつ持ってる、夢。

でもここで修行を兼ねて働き出して5年、今の私はまだ、芋剥きさえさせて貰えない。

皿洗いにゴミ捨てに、そればかり。

それでも、めげずに周りの料理人たちの技を横で見て、技術を見まねで盗んできた。

そうして、店の営業が終わってからひっそりと自分の料理を試作する。

そんな生活が3年目。

周りのシェフは、上手くなったなと言ってたまに食べてくれる。

でも、チーフは一度も食べてくれたことがないし、一瞥して皿ごとゴミ箱に捨てられたこともある。

私を嫌悪してる、らしいけど…どうしてなのか、わからない。


「だめだなあ…こんなネガティブじゃ…」


ふるふると暗い考えを振り払う。

頭が悪いんだから、考えても仕方ない。

私には腕を磨くしかないんだから。

思い直して、誰もいない厨房に置き去りにされて冷え切っているだろう試作品を、自分の胃で処理するべく

カラになり幾分か軽くなったゴミバケツを抱え、石畳の道を引き返し、裏口から厨房に戻る。


「あ、お帰りー」

「うん、ただいま……ん?」

「ん?」


誰もいないはずなのに当たり前のように返ってきた返事に、なにも考えず普通に返し、一拍置いて動きを止めた。

ギギギ、と首を横に動かしてみれば、もぐもぐと私の試作品の子羊のソテーを勝手に食べている、男。

ただの男じゃない。

ううん、ただの男だった方がどれだけマシだったか。

男は構造がよくわからない服に、何故か片目の方だけしか穴が開いてないマスクをつけた、どう見ても変人だった。


「…………あの、どちらさま…でしょう」

「オレを知らない?君のことをいつも見つめてるオレだよ」

「(あ、どうしよういろんな意味でかなりやばい人だ)」


to be continue…
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