紡いだ絹、繋いだ赤 | ナノ





‖瞼を開いて





主、主よ。

どうして俺を連れて行ってくれなかったんだ。

最後まであんたと戦いたかったのに。

俺がいたら、あんたは…


***


ぱちり、と開かない筈の瞼が開いた。

光が差し込む先に、2人の影。

よくよく目を凝らせば、片方は、主人と同じ色の目をした老いた男。

もう一人は、記憶と重なる赤い髪をした幼い少女。


「あんたらが…新しい主、か?」

「そうだよ、和泉守兼定。よく来てくれた」

「はじめましてなのです!和泉さん」


優しく俺の両の手を握ってくる2人の姿が、遠い日のあの人らに重なって、開けたばかりの瞳が潤んだ。


"今までありがとうよ。お前は俺が侍として最期まで生きた証だ"

"あの人をずっと護ってくれてありがとう。貴方とはまた、いつか会いましょう"


「…俺はかっこよくて強い刀だからな。手入れは丁寧に頼むぜ、主…姫様」






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