強キ事ハ美シキ哉

薙刀の血を払う、風をきる音。


「やはり惜しいのう」

「なにがよ?」

「おまんが男児ならば、戦場で一騎当千の働きができただろうぞ」


よほど価値ある首になったろう。

そう口にすれば、ふと目を伏せてから口角を上げた。

なんじゃ、今日は殴らんのか。


「…そう思うくらい、私は強い?」

「ああ、強い。女子とは思えん」

「…そんなに強いなら、私も男になって早く戦に出たらよかった」

「なんだ、珠緒の時代じゃあ女が男になれるがか?」

「…なれないわよ。なれてたら、こんな口惜しい思いをして生きちゃいないわ。なりたかったって話」


ごん、と鎧の胸当てを手の甲で小突かれた。


「それに…私が強いのだとしたら、私の強さは女だから手に入れられた強さなのよ」

「女だから?」

「…身を焦がす嫉妬と、途方も無い愛憎。それから地獄の旅路まで供をする覚悟が、私を強くしたの」


女は外面に極楽を着て、中には地獄を孕んでる、怖く強い生き物だから。


「自らに宿る炎と熱で叩き上げたのよ、私の強さは。ある人の力になりたいが為に」


だから私は女のままでいいのよ、と笑う顔は眩しい。

女とは、男と異なる戦をしているのか。


「…強か女ど」

「…ふふ、ありがとう」



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