散ル期ヲ逃シタ華
花を愛でる趣味はないが、芯の強い茎を持った白百合は見ていて悪くない。


「おぉい、珠緒」

「なにかしら、信長殿」


きりりとした真面目な顔つきに、相変わらず甘さという隙はない。

背筋を曲げもせず、凛とした立ち姿。

ならぬならぬと煩いのを除けば、悪くない芯のある女だ。

だからこそ…


「お前さん、夫がいなかったなら男を知らんのか」

「……ぶつわよ」

「おーおー、真っ赤な顔で言われようが怖くねェな」


だからこそ、こういう女をからかうのは面白い。


「…からかいならほどほどにして」

「いやいや、興味があってな。凛とした花をそんなに惚けさせた野郎に」

「惚けてなんかないわ」

「惚けてなけりゃなんだというのだ。生涯操を捧げるほどの男だったんだろう」

「……ため息がでるくらいの色男だったわよ、とびきりのね」

「俺よりもか」

「…勝負にもならないわ」


ふん、と哀愁の隠せていない、だがバカにしたような笑みに、酷い言い草だと嗤う。

見た目に似合わず、随分と罪な男に持ってかれてるらしい。


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