「──というわけでコビー君、ヘルメッポ君。貴方方を改めて、正式に海軍に歓迎したいと思います!」

「は、はいっ!」

「へ!?」


ルフィさんたちが出立した翌日、2人を支部長の執務室に呼び、バケツとデッキブラシを渡して決定を告げる。


「最初はこの支部で雑用からやって頂く形になりますが、海軍は実力主義...努力と実績次第で年齢問わず昇進は可能です。

...私は本部勤務の身ですので、お2人の成長を近くで見守ることはできませんが、本部で共に働ける日を…」

「ちょっ、ちょっと待ってくれよ!アヤさん!!」

「何でしょうか、ヘルメッポ君?」

「どうして俺が海軍で雑用なんか!別に俺は海兵になりたいわけじゃあ...」


渡したバケツとデッキブラシを荒々しく床に放り出したヘルメッポ君を見る。


「...では、貴方もモーガンさんのように本部に送検される方がよろしいのですか?」

「よくねえよ!だ、大体俺も親父に巻き込まれただけで...」

「──いいえ。残念ですが、それは違うと言いざるえません、ヘルメッポ君」


ヘルメッポ君の目を見据えて、言葉を続けた。


「確かに、貴方にあのような行動を許したことは貴方だけが悪いとは言えません。

しかし貴方のしてきた民衆への行いは、世界にとっての正義でなければならない海軍の信用を失墜させるものだった...それは貴方自身が自己を見直し、反省しなければならないことです」


放り出されたバケツとデッキブラシを拾い直し、彼にもう1度二つを差し出す。


「送検か、やり直してみるか...決定に従えないのであれば、貴方が決めてください」


貴方の人生ですから。

言い放つとヘルメッポさんは、目の前で悩むように顔を少し歪めましたが、すぐに私の手から二つを奪いとっていった。

選んでくれるだろうとは思っていましたが、本当に聞いてくれて良かった、と胸を撫で下ろす。


「ちくしょう...(あの麦わらのせいで...!)」

「...ヘルメッポ君」

「今度はなんだよ!」

「...少しきつい言い方をしましたが、貴方にも私は期待しているからやり直すことを提案したんです」

「!」

「貴方の選んだ結果がどうなるか......成長した貴方に再び会える日を楽しみにしています」


勿論コビー君、貴方もですよ。

隣でハラハラした顔で見ていたコビー君に申し訳なくなって、緊張をほぐそうと片目を閉じて唇に指をあてて見ると、彼は照れたようにして頑張りますと答えてくれた。


「さて...それではお二人共、勤務へ向かってください。私も仕事を終わらせたら他の島にできるだけ早く出立しなければならないので」

「そうなんですか?残念です...本部のお話とか聞いてみたかったんですけど...」

「...コビー君は──、海軍を本当にお好きでいてくださるんですね」

「は、はい!もちろんです!!た、大将目指してますから!!」

「──そう、ですか。...ふふ、貴方ともしも隣で肩を並べる日がきたら、きっと私にも見たことないものが見える気がします」

「え...?」

「さあ、目指せ海軍大将!ですよ!行ってらっしゃい」


2人の背中を押して、部屋の外へ出す。


「(…彼らなら、新しい風を吹き込んでくれそうな気がします...楽しみですね)」


凸凹な若い2人を思い出し、くすりと笑い声が零れた。


期待の風
(アーニャさ...アヤ部長のさっきの言葉って...)
(ばっかお前知らねーで言ってたのか!?あの人は情報伝達部長だぞ!!海軍大将と同等...場合によってはそれ以上の権利があるんだぜ!?)
(!?!?!?だ、だからさっき隣でって...!!)

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