すべき仕事を終えて、いつになく人が集まる賑やかな港町にジャスミンちゃんを連れ立って戻る。
街の市民の方々も、海兵の方々も、みんな一様に水平線を見ていた。
どうやら彼らは旅立ってしまったらしい。
間に合うかと思ったけれど、残念です。
この先の海でまた出会えることを期待していよう、と思いながら海兵の方々の一団の背中を前に足を止める。
「1歩、遅かったようですね」
「!...あ、貴女は...!!」
みなさんが一様にお目めまで飛び出してしまいそうな驚いた顔で見てくる中、コビーさんが私に気づいて声を上げた。
「あっ!アーニャさん!!」
「コビーくん。お怪我の方、大丈夫だったようで良かったです」
「おかげさまで...ってそうじゃなくて!どこに行っていたんですか!?ルフィさん、貴女を探して仲間にしたいって言ってたのに...」
肩をがしりと掴んで必死な顔で言ってくる彼の思いがけない言葉に目が思わず丸くなる。
「あら...そうだったんですか?まあ、それは...少しばかりびっくりするお話ですね」
「...というかアーニャさん、なんか訛ってないですね...?」
「ああ、まあ...こちらが本来なので...」
「君!なにを人違いしているんだ!?この方の羽織る物が見えないのか!」
「羽織るもの...?」
私の肩を掴むコビーくんが、自分の触っている肩飾りをまじまじと見たあと、冷や汗を流しはじめた。
「......え??」
「はい」
「海軍の...しかも将校以上しか着れないコートですよね...??」
「はい。僭越ながら私も羽織らせて頂かせています」
「......アーニャさん??え?海軍将校??」
汗だくの彼の困惑した顔に苦笑を浮かべ、もう一つゆっくりと頷く。
「...改めて本当の自己紹介が必要ですね。私は海軍本部、情報伝達部部長のショウガン・アヤと申します。
この度はシェルズタウン支部に不正の動きありと見て、潜入調査を行っていたので、アーニャという名前を使い、身分も偽っていました」
嘘をついてしまっていて、申し訳ありません。
謝罪と共にコビー君に敬礼をとれば、彼は大声をあげた一拍の後、目の前で気を失ってひっくり返ってしまった。
「...そんなに意外だったでしょうか...?」
「かなり意外だったかと思いますよ...」
他の方々に運ばれていくコビー君を見送りつつつぶやけば、モーガンさんの部下であった中佐さんから返事が返ってきたので彼を見やる。
「...中佐さん、でしたね。貴方は」
「はっ!...ショウガン部長、この度の件は...」
「大丈夫です。私も見て分かっていますから...貴方方一人一人を私は罪に問うつもりはありません」
「!...ありがとうございます...」
「代わりに貴方に今後のこの支部をお任せます...それから、新兵としてコビー君とヘルメッポ君のことも」
「は...!?」
「あら...お嫌ですか?私は、なかなか良い案かと思うのですが」
「い、いえ、貴女のご命令とあれば全て受けますが、コビーというあの少年のことはわかりますが...何故モーガン大佐の息子である彼まで...」
「...確かに、彼の行動に問題がなかったとは言いません。ですが、父親の罪ありきで、子供の彼までがキツく裁かれることはおかしいと思うのです。だから彼には、やり直す環境を与えたい」
親と離れ、ちゃんと自分を見つめた時に、彼は伸びると思います。
私の多大な期待もありますが、と付け足して中佐に笑いかければ、彼は少し迷った素振りを見せたが了解と敬礼をとってくれた。
自然と微笑みが口元に浮かぶ。
「ありがとうございます、中佐さん。貴方が優しい方で良かった」
「...貴女が優しいので、同じ気持ちになるのです、ショウガン部長」
これで、このシェルズタウン支部はもう心配することもないでしょう。
本部に早々に報告を送らなければ。
任務達成
(もしもし、こちら部長のアヤです)
(ああ、聖母(マリア)お疲れ様です。こちらファナティス...全て終わりましたか?)
(はい、ですのでセンゴク元帥に繋いでいただけますか?ファナティスさん)
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