「(あの小さい子の方は海軍になりに...麦わら帽子の子は海賊になるためにゾロさんを仲間にしに......随分とちぐはぐな組み合わせですね)」


片耳で聞いていた会話から気になる部分を取り出す。

にしても、麦わらの子はこれから海賊になりにくるなら止めるべきなんでしょうか…

でも、まだ罪を犯したわけではなさそうですし、手配もされてないルーキー中のルーキー。


「(…とりあえず保留にしておきましょう……それに彼は何か、止めてはいけないような…)」


なにかしてくれそうな、そんな予感がするのです。

これが前にいつだかヒナさんが言ってた女の勘という奴なのでしょうか。


「(なんにせよ、様子を見ますか…しかしあの海兵になりにきた子は、なんて間が悪い…)」


海軍全体の見方が変わらなければありがたいのですが…

そう、少しだけ複雑に思いながら彼らが去っていった支部のある方を見つめた。


***


「アーニャちゃん、休憩してきていいよ」

「わかっただ。行かせてもらうべよ」


エプロンを外し、店を出て街を歩く。


「(…やはり気になるあの子たちに接触してみますか)」


小さな町です。見聞色の覇気を広げれば、すぐに見つかるでしょう。

行き交う人々の心の声を聞きながら、彼らの声を探し、歩き出した。



***


案の定、彼らはすぐに見つかった。

声を聞くまでもなく、町の中で麦藁の子がヘルメッポ君を殴ったという騒ぎが起こったからだ。

慌てて駆けつけた頃には、もう遅かった。


「やっぱりただじゃ済みそうにありませんよ!!例の大佐が怒って下手すれば海軍が動く恐れも…」

「その時はその時だ!おれ、ゾロに会ってくる」


周りを歯牙にもかけず、海軍支部の方へ歩き出す麦藁の子に声をかける。


「お客さん達、面白いべなあ」

「!…貴女、さっきのお店の…」

「アーニャと言う者だべ。旅人をしているべよ」

「ぼ、僕はコビーと言います」

「俺はルフィ!海賊になるところだ!」


コビー君とルフィ君の名前を頭にインプットし、よろしくお願いしますと挨拶してから本題に入る。


「ところで、ゾロさんを助けに行かれるんだべか?」

「おう!」

「海軍支部の大佐を相手に?」

「関係ねェよ!」


そう当然のように言い切ってしまえる勇気と無謀さに、ドキドキした。

物語の中の英雄のようだ、彼は。


「…ふふ、かっこいい人だべなあ、貴方は」

「そーか?」

「んだ……一緒にいって、見ててもいいべか?」


邪魔はしないからと言えば、いいぞと軽い返事。


「危ないですよ!?アーニャさん!」

「大丈夫だべよ、こっそり見てるだけにすっがら」


彼がやってくれたら、こちらも現行犯逮捕ができるかもしれないという打算もあるけれど

なによりも彼がどうする気なのか興味がでてきました。


「貴方方に私、興味がでちゃったんだべ」

「興味って…」

「うふふ…ドキドキすることが好きなんだべよ」


にっこりとコビー君に笑ってから、ルフィ君を追いかけた。



駆け出した予感

(アーニャさん…僕と同じくらいに見えるのに、勇気があるなあ…)

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