いきなりパパの頭が蹴り飛ばされてびっくりした。
砕けたから死んじゃったかと思った。
すすり泣きを続けていたら、ママが鼻の頭をなでてくれる。
気を抜いたら、火がでるかもしれないのに。
「コルクちゃん、大丈夫ですからね。貴女のお父さんも、貴女と同じように悪魔の実を食べた人なんです」
「…パパも…?」
「ええ。あと他のお二方も…海軍やこの海にはたくさんそう言う、さまざまな能力者の方がいますよ」
「……私だけじゃ、ないの?」
「勿論。みなさん能力を普段は制御してらっしゃるんです。コルクちゃんも能力を制御できるようになれば、なにも問題なんてありません」
だから自分を怖がらなくていいんですよ。
そう微笑むママに、心から力が抜けていくのがわかる。
「…勝手に変身しないようになる…?」
「きっとなれますよ。コルクちゃんは、市民の平和を護る最強の1人の、クザンさんの娘なんですから」
全てを肯定してくれる言葉に、心と身体の緊張がとけていった。
毒を出さないようにしながら、深く息を吐き出すと、一緒に自分の身体が縮んでいく。
「…戻った…」
「ほら、やっぱり大丈夫でした」
よくできましたね、と頭をなでてくれるママにそのまま前から抱きついた。
「…ママ、ありがとう…」
「私はなにもしていませんよ。それより身体は大丈夫ですか?」
「うん…」
「それならよかったです」
身体をママから離して、パパをちらりと見ると砕けたのにパパはすっかり元通りになってた。
「…コルク、よかった戻って」
「……パパも、本当に治ってる…」
「俺は氷になれるからね、物理攻撃は効かないのよ」
「…割れたり溶けない?」
「普段は普通の身体だから、大丈夫」
それを聞いて、ぽす、と広げられた腕の中に飛び込み抱きつく。
「まあとりあえずよかったねェ〜?コルクちゃ〜ん」
「……………」
さっきのパパを笑顔で蹴る映像が頭の中で再生され、身体が固まる。
「あれェ〜?」
「クザンさんの頭を目の前で砕いたからですよ…」
「わかりやすいと思ったんだよォ」
「ボルサリーノ、コルクが下向いて震えてるからちょっと離れて」
「そんなに怖がらなくてもいいのにねェ〜」
…怖いわけじゃないもの…怒ってるだけだもん…
そう思いながら、パパの首にすがりつく腕に力をこめる。
「しかし能力を制御ができるようになったわけじゃなかろう…またこがァなことが起きちゃあ困るけェ」
「それは、まあ…そうですね。フェンリルの能力が、コルクちゃん自身にも危険なのは確かですし…」
「……私、訓練したい」
実際に、パパやママを火で焼きかけたし、これ以上迷惑をかけたくない。
それに、強くもなりたい。
私を受け入れてくれる人を助けたいから。
「…海軍の訓練つらいよ?」
「大丈夫。それに、パパが仕事の間は暇だから」
「……わかった。でも無茶はだめだよ?」
「うん…」
そうして私はこの日から、海軍本部海兵見習いという肩書きで、本部で訓練をすることになった。