コルクと暮らし出してしばらく。
いくつかわかったことがある。
あんまり喋らないけど、いざ口を開くと素直ゆえかキツイってこと。
綺麗好きで、仕事から帰ると家を片付けていてくれたりすること。
いた場所があまりよくなかったのか、人を警戒しがちなこと。(俺やアヤにはわりかし懐いているが)
まあつまり、基本的には手のかからないいい子だ。
突然現れた子供とはいえ、愛着も沸き、可愛くなってきたし。
でもだ、少しだけ問題がある。
「……コルク、がっつくのは行儀が悪いよ。落ちついて食べな?」
「………」
「スープは皿ごといかないで。スプーン使って」
指示を出すたび目に見えて不機嫌そうにしながら、拙いスプーン使いでスープを飲み出したコルクを見て、内心ため息をついた。
そう、これが問題。
コルクは敬語や言葉の読み書きはできたものの、人らしいマナーというものが足りてなかった。
最初の食事で、慌てたように犬食いしようとした時はこっちが驚いた。
日常生活で当たり前だったと本人は言うから、多分誰も教えなかったんだろう。
というかどんなサバイバルな生活してたの。ここくるまで。
「…コルク、ご飯なんかここでは誰もとったりしないよ」
「……わからないじゃない」
「絶対ないから。今よこどりするとしたら俺だけじゃん?」
「…パパがするかもしれない…」
「コルクはもうちょっとパパを信用しようか?とらないよ。ほら、皿おいて」
さっと皿を抱え込んだこの子は、俺をなんだと思ってるんだ。
「………絶対とらない?」
「とらないよ。だからマナーをちゃんと学ぶ気になって?そのままだとコルクがみっともない大人になるよ」
「………、わかった」
そろそろと皿を置くコルクを見ながら、コルク用の買い置きのアイスやらは絶対食べたら駄目だなと自分の肝に命じる。
「ちゃんとマナー覚えられたらさ、アヤにデザート作ってもらおう?」
「!ほんと…?」
「ほんと」
「…がんばる」
珍しくぎこちなく浮かべる子供らしい笑顔に、現金だなあと思いながら口元をゆるめた。