「ここ俺の家ね。今日から君の家にもなるけど」
「…広いけど、もの散らかりすぎ」
「あー…大体ソファかベッドから動かないから」
私の生活環境を整えろとパパは、夕方からの仕事が休みになって、二人でとりあえず家にかえってきた。
かえってきて、見たアパートの一室は広いけど、服やらなにやらが散らかっていた。
パパはやっぱりだらしないらしい。
女の人だけにとどまらず、生活もだらしない。
「…海軍大将なのに、しっかりしてないね」
「君は案外、口うるさいね」
物静かな子だと思ってた。
そう言われて思わず、言い過ぎたかと口をつぐんだ。
せっかく住めるようになったのに、嫌われてしまうのは嫌だ。
顔を伏せれば、パパがしゃがむ気配。
少し間を置いて頭を撫でられた。
そっと顔をあげると私と同じ色の瞳。
「別に口うるさくてもいいのよ。気にしたならごめんね、俺慣れてないからさ」
「…別に、気にしてない」
「(…アヤの時よりむずかしいなあ)…まあとにかく、自分が好きなようにしてくれていいからね。お互い楽にしようよ」
「…わかった…」
…嫌われてはないみたい。
胸の中で息を吐き出すと、パパが、あっちが君の部屋と指を指した。
「空いてる部屋だから好きに使っていいよ。あ、家具とか先に買わなきゃだめか」
買い物にいこうかと言って、私の体を抱き上げた。
「服とかも色々買わねェとこれから困るしもんな、女の子だし」
「…気にしないで」
「だめだよ。女の子は可愛くしといてやらなくちゃ」
そう言ってニィと笑うパパは、だらしないけど、やっぱり悪い人ではないようだ。