「あ、あの…コルクちゃん」
「…なに?ヘルメス」
「あの、花摘んできたんだ…コルクちゃんにあげる!」
「…ありがとう」
「えへへ…それじゃ、それだけだからッ」
顔を赤くしてささっと走り去っていくアヤのとこの孤児院の子を影から見送り、野草の花束を渡された娘に近づく。
「コルク、仕事終わったから帰ろうか」
「…パパ、ヘルメスが花をくれた」
「そっか…」
子供の恋愛なんか縁がないと思ってたし、こういうのはあんまり関わらない派だったんだけどな。
可愛い娘の恋愛となると、話は別になってくる。
これが世の父親の気持ちってやつなのか。
「…コルクは嬉しい?」
「…花は嬉しい。もらったりしたことないから」
「ヘルメスのことは好き?」
「嫌いじゃない…友達…だから」
ああ、なんだかほっとした。
やっぱり友達作りで精いっぱいのコルクには恋愛なんてまだ早い。
「コルクはまだまだ子供だね」
「…恋とか、良く分からないもの」
「まだわからないままでいいんだよ。パパに甘えてくれる子供のままでいいからさ」
しゃがみこんでそっと頭を撫でてやれば、照れくさそうに小さく笑った。
基本的に言葉がキツイし表情が硬い分、こうやってでれてると、ますます可愛くてたまらなくなる。
アヤのとこの孤児院の子とはいえ、やっぱりそうそうコルクを嫁にくれてやる気にはなれない。
「さて、帰ろうかコルク。その花も飾るんでしょ?」
「うん…花瓶ある?」
「前にもらったやつがあるよ」
「……どこの女から…?」
「部下だよ、心配しなくても」
急にぴりっとした声音に苦笑しながらコルクを抱き上げる。
「…私が恋するとしたら、パパみたいな浮気男はいや」
「はは、そう…っ、え!?」
「いや」