銀魂短編 | ナノ



「朔夜ー甘いもん食いに行こーぜ」


「もう、今月食べ過ぎだよー」


「いいだろ?お前も好きじゃん甘いもん」


「確かに好きだけど……はあ…仕方ないなあ…」



結局甘いものの誘惑に負けてしまうのだ


とくに秋は甘味屋が気合いをいれてくる季節、甘いもの好きが勝てるはずもない


それに甘いものは、小生たちに一時の幸せも連れてきてくれるから


やっぱり、生きていく上で欠かせず、故に誘惑に勝てるはずもないのだ



***



「何食うよ?やっぱあんみつか?」


「んー・・・そうしようかな・・・銀時は・・・今日の気分はいちごパフェ?」


「流石わかってんなー俺のこと」


「わかるさ。何年卿と一緒にいると思ってんだい」



甘味屋の外の、赤い布を敷いた長椅子に隣同士で座り、苦笑する


銀時の感じてることやなんとなくの考えなんか、すぐに伝わってくる


そしてそれは、逆を返せば銀時も同じなのだろう


魂が繋がっているとでもいうのだろうか


銀時が感じていることを小生も感じ、小生が感じていることを銀時も感じる


どちらかが傷つけば、どちらも傷つく


どちらかが嬉しいなら、どちらも嬉しい


一度離れたことによって、その繋がりは更に深くなった気がする



「ねぇ銀時、」


「ん?」



この繋がりが切れる時は恐らく


どちらかがこの庇護しあう依存したような関係から脱却しようとした時か


死んだ時なのだろう


どちらにせよ、きっと銀時という存在がこの魂から切り離された時


小生はきっと、痛みという痛みを超えた感覚を覚えるのだろう


それは、お義父さんを失った時のような


それときっと似ているのだと、小生にはわかる



「銀時は・・・ずぅっと昔、二人でした約束覚えてる・・・?」


「・・・ああ、覚えてる。つーか忘れたことなんかねーよ」


「「ずっと側にいよう」」


「・・・だろ?」


「うん・・・けどさ、小生は・・・」



もう離れた方がいいのかもしれない、と言わなければいけないのに、言えない


あの約束は、互いに一人ぼっちだった小生たちが、二度と一人にならないための約束だった


けれど江戸にきて再会した銀時は、もう一人じゃなかった


新しく手に入れた世界で銀時は、たくさんの宝物を手に入れ、幸せそうにしていた


もはや取り戻せぬ過去と、不変の願いしか携えていなかった小生とは違い


銀時は、とうに歩きだしていた


それが嬉しいと同時に、少し置いてかれた気がして、もう必要ないんだな、って寂しいと思ってしまった


一人にしないでなんて、小生は思ってはいけないのに


孤独なのはもう嫌だよ、小生に言う権利なんかないのに


小生がいつまでも皆の中にいても、孤独なのは


全部小生自身のせいで、その結果なんだ


だから、銀時だけをこれ以上約束で小生のそばに縛るのは


わがまますぎるから、終わらせなきゃいけない



「・・・なァ朔夜」


「・・・?」


「なに考えて、今言おうとしてること言おうとしてんのかはわかんねーけどよ・・・俺は、お前から離れる気なんかねーからな?」


「!・・・でも・・・」


「・・・朔夜。俺はお前の笑顔が好きだ。真剣な表情も、さらさらストレートの髪もだ。それに声が、匂いが好き。

その見た目も好き。魂だって好きだ。言ってっと日暮れちまうくれー全部な。要するに、まぁ・・・その、なんだ・・・」



俺は、お前を一番大切にしてェんだよ



「俺が、お前といてーんだ・・・だからお前を二度も失う痛みを味わわせねーでくれよ・・・」


「銀時・・・」



小生を強く抱き寄せ、縋るように言う銀時に、小生はなにも言えなくなる


小生の不始末で行方知らずとなったことは、思う以上に銀時をいまだ苦しめているらしい


遺された唯一の家族のような小生を護ろうと、いつも必死になってくれた銀時だから当然なのかもしれない


小生よりずっと大きいのに、子供のように縋り付く銀時の背中を抱きかえす



「(・・・あったかい)」



友人で家族で戦友で、言葉じゃ足りないくらい尊くて


忘れてしまいそうな、他人の温もりを与えてくれる


そんな銀時は、優しくて甘い甘味のように


小生の心を、いつもいつも幸せにしてくれるのだ


だからやっぱり


「(甘味も卿も、手放せないよ)」


その甘さに溺れてしまうのだろう



ーー甘味絶ちーー
(甘味は快楽中枢を刺激する麻薬だと聞いた)
(だからきっと小生たちは、この甘やかな関係を続けてく)

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