銀魂短編 | ナノ



「朔夜ー昼どこで食う?」


「そうだねェ・・・折角お金入ったし、でにぃす行こうか」


「お、よっしゃ」



二人で万事屋にきた依頼を終えて、大路を歩く。


朔夜と二人きりのこんな時間は久しぶりで、自然と俺も内心浮足立つ。


ガキみてェな反応かもしんねーが、最愛の存在と二人きりなんだから仕方ねェだろ?


隣でガキの頃から変わらず微笑む朔夜を見つめていると、朔夜が、横を見てふと足を止めた。



「?・・・!」



朔夜の視線の先には、どうにも俺とはあわねェ、ニコチン野郎がいた。


野郎は仕事中らしくこっちに気づいてなかったが、朔夜は本当に甘い表情で、その姿を見ていた。



「(・・・あぁ、やっぱりそうかよ)」



お前は、アイツが好きなのか



***



「・・・朔夜ー?ぼーっとしてるとひかれっぞー」


「え、あ、ご、ごめん」



何も気づいてないようにいつも通り声をかけて、ふるまって、道化を演じる


野郎に恋をしたなんて知ってた。でもまざまざと見せつけられちゃ、泣きたくなる



「さ、行こうぜ。昼飯食うんだろ?」


「う、うん。そだね」



ゆっくりと微笑む朔夜は、やっぱりさっきほどのとびきり甘い顔はしねェ


こいつにとって俺は特別は特別でも


恋愛とは程遠い特別


だから、そんな存在の俺に惚れたりとかしないことくれェ分かってる


でもよ、夢くらい見てたっていいじゃねーか


もしかして、特別の意味が変わるかもしれねーんじゃねーかって



「――なぁ朔夜、好きだぜ」


「?小生も好きだよ」



銀時が大好き


こうやって、たやすく吐き出す言葉の持つ力にも、こいつはきっと気づいてない


知らなくていいことにばかり聡いくせに、知ってほしいことには鈍い


俺がいつもさりげなく好きという言葉に隠してる


切羽詰まった感情すら読めないなんざ


天才失格だっての



「・・・なんでお前なんか好きになっちまったんだろうなぁ」


「え、なに?」


「いや・・・なんでもねーよ(後悔はねぇけどな)」



一人ごちて、つぶやいた言葉は聞こえなかったのか


見上げて問いかけてくる朔夜に苦笑だけを返し


幾分か俺より低い位置の頭を撫でる


昔から変わらない、指通りのいい闇色の髪にまた愛しさが募る


そして、多少の切なさも今は重なっていく



「(・・・滅茶苦茶痛ェ・・・)」



いつか、きっとコイツの隣にいるのは俺じゃないんだろう


でもその日までは、いや願うのならそれから先も



「朔夜・・・俺はずっとお前の側にいっからな」


「?うん・・・小生も銀時の側にずっとにいるよ」



遥か昔から互いに交わし続けた、この言葉と約束が続けばいい



ーー遠くて近い、近くて遠いーー
(近すぎて触れられないならば、離れてしまえば楽だ)
(だが、そんなことできるわけもねェ)

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