銀魂短編 | ナノ



「んっ、雨…」



朝から続いていた曇天は、ついに耐え切れず涙のような雨を降らしだした


静かに世界を包む雨音に、傘を持ってくるべきだったと一人店先の下でため息を吐き出す


その時、番傘を持った人が近づいてきた


その人物が誰だか気づき、自然に笑みが零れる



「銀時」


「なにしてんだ?朔夜」



***



「傘を忘れるたァドジだなー」


「忙しくて天気予報を見忘れたんだよ」



送ってやるよ、と言ってくれた銀時のさす傘の下に入り、隣の銀時に密着し、寄り添い歩く



「にしても、今日は静かだねー」


「この雨だからな…皆なるべくひっこんでんだろ」



雨のせいか、いつもより人気の少ない街


厚い灰色の雲に覆われた空


傘に当たって跳ねる雨音


誰もいない濡れてゆくコンクリートの路上


まるで小生たちだけが別の世界に切り離されたような


迷い込んでしまったような


そんな感覚に陥り、銀時の見慣れた着流しの裾を握る



「?朔夜、どうした」


「…ううん。かぶき町がこうも静かだと落ち着かないなーって」


「確かになァ…でもたまには粋なんだろ、雨って奴も」


「……そうだね」



銀時の言葉にゆっくりと笑って、プラスなことを考えようと昔見た話を思い出す



「そういえばさ、知ってる?」


「何を?」


「雨の日の傘の中って、一番人の声が綺麗に聞こえるんだって」



雨粒に音が反射してとても綺麗な響きになる


そう書いてある本を見て、試してみたいなと心を高鳴らせた日を思いだした



「ねえ綺麗に聞こえる?どう?」


「聞こえるもなにも、お前の声は雨じゃなくても………」


「…?」


「…いつも通りだろ」


「えー感性が足りないよ銀時は」


「んなことねーよ」


「むー…がっかり」



幼き日に胸をどきどきとさせた疑問は


あっけなく、幼き日より共にいる男に突き崩された



「そんな馬鹿なこといってる暇あるならさっさと帰るぞ。風邪ひいちまうだろーが」


「はいはいわかったよ」


そしていつもと違って静かなしおらしい街を、いつも通り賑やかに歩くのだった









ーー雨声リフレクションーー
(反射なんざしなくたって、綺麗だろ)
(そう言えていたのなら)
(俺たちの関係はどう変わったんだろうな)


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