ギャアギャア
濁った空の下で、カラス達が喚いては、敵味方関係なく先ほどまで戦場だった場所に転がる屍をむさぼっていく。
相変わらず毎日変わり映えのしねェ光景だ。
「・・・」
「――銀時!」
「!・・・朔夜、どーしたよ?」
急にかかった聞きなれた声に振り返れば、予想通り朔夜の奴が俺に近づいてきてた。
ったく・・・あれほどあんま終わったばっかの戦場走りまわるなって言ってんのに・・・俺も返り血だらけで汚ねェし。
「卿だけ帰ってこないから探しに来たんだよ・・・皆はもう戻ってるのに・・・」
「そうか・・・」
自分一人探すために、虚弱な体で、戦場をかけてきてくれたこいつは、やっぱり志士の『女房役』とか『茨の姫』とか呼ばれてるだけあると思う。
ただ、気にくわねぇのは他の奴にとっても・・・ってことだ・・・
そう思うだけで、戦場で発散したはずのどろりとした気持ちが溢れる。
・・・こいつが、俺だけ気にしてくれればいいのになァ・・・
そう思うと同時に、手が届くほど近くにいた朔夜の腕を引っ張り、思い切り抱きしめる
・・・あァ、あったけェ・・・やっぱこいつの体温を感じると・・・俺の中にのたうちまわる黒いものが落ち着く気がする。
「・・・銀時、どうしたんだい・・・?」
「・・・朔夜さ、今日俺のこと心配してた?」
「・・・そんなの聞かなくてもわか「いいから言えよ」!・・・心配、してたよ・・・」
「本当に?」
「勿論、当り前だろう・・・?いつだって心配してる・・・(また・・・この問いか・・・)」
「・・・俺だけのこと考えてくれたりしてる?」
「・・・してるよ。ちゃんとそれぞれのこと考えてる・・・(最近、多いな・・・)」
・・・それじゃ、やっぱり皆じゃねーか・・・
ずくり、と少し落ち着いていた黒いものがまた動き出す。
「・・・銀時・・・」
「・・・なんだよ・・・」
「・・・小生は銀時たちといたいから、自分の全部捨てて、ここにいるんだよ・・・?
だから、離れたりしない・・・考えない日はない・・・ずっと、一緒にいるから・・・落ち着こうか」
「・・・絶対・・・俺を置いてどこにもいくんじゃねーよ?俺がずっとずっと朔夜を守るからよ・・・お前は俺を裏切んな」
「・・・置いていかないよ。一緒にいる・・・裏切ったりしないよ・・・大丈夫・・・」
ぽんぽん
俺の背に回された朔夜の細い手が、まるで俺を落ち着かせるように俺の背を軽く叩いた。
こうしているときだけは、朔夜は他の野郎のことを消し去って、俺のことしか考えないから、俺はガキみたいにこれを強要する。
好きとか大好きなんて言葉じゃ生温ィくらい・・・俺は朔夜を愛してる
もう俺は、俺の狂気も滅茶苦茶な言葉も受け入れて抱きとめてくれるこの温もりがないと生きていけねェ気さえする。
それくらい俺は朔夜を愛してんだ。幼馴染とか、家族とか、仲間とか、恋人とか、そんなもんじゃねェ・・・
「・・・朔夜・・・」
「?なんだい・・・?」
「・・・俺、オメーがいないと・・・どうも頭狂っちまうみたいだわ」
――ただ一人の愛すべき、精神安定剤(キミ)ーー
(仲間だろうが、誰であろうが、絶対にくれてやらねェ・・・朔夜は俺といるためにここにいる)
(銀時は優しくて強くて、いつも守ってくれるから、小生は気がすむまでそばにいよう)
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