▽ 04
前から歩いてくる焦がすような赤と、焼き付けるような黄色とすれ違いざまに目線があった。
すごいチンピラ、いやヤクザ顔?
あんな目立つ同期はしらないから、先輩かしら。
ただの一般的な先輩訓練兵、ではなさそう。
目が、空気が、他とは違っていた。
ただ、とそっと振り返れば向こうも同じだったか、こちらを振り返ってみてきた。
「…どうも」
「よォ〜…後輩ちゃんかい〜?」
「まあ、多分」
「…」
へらりと笑う黄色い男と反対に、赤い赤い男の、焼くような鋭い視線に確信する。
「(多分、赤とは気が合わないわ)」
***
「ネメシス、クザン、サボりはよくねぇでだ。特に今日は」
「あら…サウロ。今日はなにかあったかしら?」
唯一、仲睦まじく話せると言っても過言ではない巨人の同期を見上げる。
彼の穏やかな気性は、好ましい。
クザン?クザンは腐れ縁で、別に仲がいいわけじゃない。
「今日は先輩と合同訓練らしいでよ」
「合同訓練ねぇ…」
だからさっきいたのか。
自分にしては珍しく興味を持った二人の先輩の姿を思い出し、寝かけていた身体を起こす。
「面白そうだから行くわ」
「珍しいな、お前がやる気出すの」
「ちょっと興味深い先輩たちがいたのよ」
「え、もしかして恋?」
「サウロ、いきましょうか」
クザンの馬鹿げたセリフをスルーして、サウロに声をかけ、訓練の場所に向かうため歩き出した。
***
「うわ、なんかチンピラかマフィアの鉄砲玉みたいな人らいんだけど。あれほんとに俺らの先輩?」
「一応ほんとに先輩みたいよ。あとクザン、多分聞こえてるから」
完全に黄色い人がこっち見て笑ってるわよ、と指させばクザンは彼をみて、しまったと言わんばかりの顔をした。
「やば…あの人絶対怖いじゃん」
「笑顔なのに笑ってないものね」
「それを君がいうかァ〜?」
「「!!」」
一瞬まばゆい光が、と思った次の瞬間真後ろから声がして慌てて振り向けば黄色い先輩。
結構距離はあったはずだ。剃ではないだろうし、さっきの光。
「能力者ですか?」
「そうだよォ。あんま驚かねェん…」
「ボルサリーノ!能力は禁止だと言っただろ!」
ぼかっと、後ろから飛んできたゼファー先生が勢い良く黄色い先輩の後頭部を殴った。
「っいてェっすよォ〜…ゼファー先生〜」
「お前が早々に注意事項破るからだ」
「…ちぇっ…ちょっとくらいいいじゃねェですかァ〜。いろいろ言われてたんで少しくらいおどかしてもォ〜」
同意を求めるように言われたが、こちらとしても歓迎していないからよくないですと首を横にふった。
そのやりとりを、半ば疲れたような呆れたような目で見ていたゼファー先生が
手にしていたボードに何か書きこみ、私たちを見た。
「…クザン、ネメシス、お前らはこのボルサリーノと、あそこのサカズキと立ち合いしろ」
「ええー…すごい怖いんすけど」
「サカズキ先輩って人、こっち睨んでますけど」
「無駄口叩いてた罰だ。それにどうせ、お前らにはあいつらくらいしか相手できねェ」
だから行け、と言われた言葉にクザンと視線だけを交わし、深い息を吐き出した。
先輩たちと楽しい訓練((よろしくお願いしまーす))
(生意気だよねェ〜)
(…舐めた奴らじゃな…)
(能力は禁止だと言ってあるし…大丈夫だといいんだが)
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