青春マリンブルー | ナノ


▽ 03


「い、一本!!」

「…はぁ…それでも貴方たち、海兵になる男なの?」


男臭い道場の中、長めの黒髪とすらりと伸びた手足、それにやわらかそうな巨乳は目を引いた。

目の色は、ニコニコしてるから見えないけど綺麗に違いない。

同期にも、こんな目が覚めるようなボインの美女がいたのか。

しかも自分より大柄の同期の男たちを、一瞬でひねり上げ、ねじ伏せていくあたり、かなりの遣り手。

俺が知らなかったとは、最近入ってきたのかな。

ぼんやりと息一つ乱していない彼女を見ていたら、視線があって、にっこりと微笑まれた。

向こうも気があんのかな、強くても女の子か。

へらりと笑い返せば、手招きされた。


「次、のっぽな貴方ね。貴方なら楽しめそうだわ」


強気な子も嫌いじゃないけど、まあちょっと男の強さってのをみせないとかな。

他の同期の俺への期待の声援を聞きつつ、黒髪ボインな彼女と相対すれば、

眼前に伸びてきた足に、一瞬で余裕ぶった考えは捨てさせられた。



***



「知らなかったとはいえ、お前を女の子と思った俺を殴りたいよね」

「普通の女の子に酷いわね。鼻の下いつまでも伸ばしてるから顔面に蹴りいれようとしただけじゃない」

「普通の女の子は人の顔に蹴りを叩きこもうとしません」


どんな戦闘部族だと言えば、防御できたんだからいいじゃない、となんとも軽い返事。

俺じゃなきゃ顔面骨折してたからね、あれ。

というか、手が付けられなくて先生んとこきたやつってこいつだったんだと何故あの時の俺は知らなかったのか。


「うるさい男ね。少しは誇りなさいよ。私と引き分ける唯一の同期なんだから」

「おかげで毎回お前と組み手やらされる犠牲者は俺だけどな」

「よかったじゃない。正攻法で私の胸に触り放題よ変態」

「なんでだろ、すげえお前ボンキュボンなはずなのに今となっては全然魅力感じない。おっぱいは大好きなのに」

「誰かこいつに海楼石つけて海に沈めてきてー」


基本的に俺たちには誰も近寄らないのを知りながら、がやがやと騒がしい食堂の隅でコントを繰り広げる。

不毛なやりとりだが、これがあの道場での一件以来よく顔を合わせるようになり、腐れ縁みたくなった結果の会話だ。

いい年頃の甘い男女の会話なんて、今更この綺麗な顔したゴリラとできるわけもな…


「天誅!」

「っうぉ!?」


チョップで、パリンと後頭部が砕けた音。


「失礼ね」

「痛くないけどびっくりするからやめてくんない!?」

「チッ…便利な身体ね、ロギアは」


人間じゃないわ、と再び目の前の大量の昼飯に戻るネメシス。

俺からしたら実を食べた能力者の俺より、実を食べてないはずのお前の方が色々ともう人間じゃない。

だからか、あんまこいつに言われてもいらっとしないのは。


「…やっぱお前規格外だな」

「海軍の一般兵の規格に収まってるレベルじゃ、私は私のなりたいものにはなれないの」

「?なりたいもんあったの?」

「まあね」


短い答えに、意外に考えがあるのかと思いながら、俺も食事の残りに手をつけた。



同期とランチ

(このあとなんだっけ?)
(歴史ね)
(うわあ…俺フケるわ)
(担当今日はゼファー先生だからやめといたほうがいいわよ)

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