青春マリンブルー | ナノ


▽ 19


「デレシシシ!ネメシスー聞いたでよ!大将就任確定らしいな」

「まだ決まったワケじゃないわ、サウロ」


目の前にどっかり座ったにこにこ顔のサウロに、フォークに巻いたパスタを飲み込んで返事を返す。

全く、なにが内密よ。すぐ噂になるんだから。


「皆決まりだなって言ってるでよ」

「たしかに…あの化物3人を押さえ込むために昇進は確定。けど…大将か、情報伝達部部長に宛てがうかで上がお悩みらしいわ」


馬鹿馬鹿しい、とため息まじりにこぼす。


「情報伝達部長?ラヴィーニャ部長は…」

「お年だからそろそろ政府が鞍替えしたいらしいのよ」

「ネメシスはどっちがいいんだで?」

「…より多くのものを知るためには情報伝達部長ね。けれど…」

「けど?」

「……なんでもないわ。それにどうせ、私は大将に宛てがわれるわよ。デスクワーク嫌いだし」


情報伝達部はきな臭いのよねとは言わず、誤魔化して付け合わせのスープを飲み干した。


「…ネメシス、もしかしてお前ェさん昇進が嬉しくねェがか」

「…昇進は嬉しいわよ。ただ、大将になったら天竜人を護るために動かなきゃいけないじゃない?それが嫌なのよ」

「ネメシスは、ハッキリ言うなあ」

「嫌なものは嫌。ほんと…思ってたより海軍は窮屈」


嫌になるほど、息苦しいわ。

空になったスープのカップで、軽くテーブルを叩いた。


***


「俺はお嬢さんに部長の座を譲る気はねェ」

「…やっぱりですか」

「予想通りか?…いや、君には安心した?か、ネメシスちゃん」


サウロと別れてから前にお茶の誘いを受けていたのを思い出したのもあり、情報伝達部長の執務室へ来てみた。

私がきた瞬間、わかっていたとでも言うようにエロ親父…ラヴィーニャ部長は笑って奥に通し、コーヒーを出してくれた。


「…どうして私が安心したと思うんですか」

「ネメシスちゃんは頭がいいからな…なんとなく嫌な予感してたんだろ?この役職に対して」


…どうやらただのエロ親父にしては頭がいいのは本当らしい。


「情報伝達部長は、業が深い職だ…安心しろ、君には向かない仕事内容であることをセンゴク達もわかってる」

「そう、良かったです…けれどいつかは貴方も世代交代が必要でしょう?」

「…いつかはな。だが、今じゃない。俺より適任が現れるような政府にとっての奇跡が起こるまで、死ぬまで現役さ。余計な犠牲者はださん」

「貴方がそこまで他に譲りたくない…情報伝達部長って、なんなんです?」

「…そうさなァ……呼吸をする政府の道具、ってとこだな」


まだこれなら聞こえがいい、と自嘲するラヴィーニャ部長の姿に

たしかに私には1日だって耐えられそうにもない役職だと、冷めてきたコーヒーを煽った。



昇進の闇

(まあ、俺はまだイイ方だ。デスクワークが得意な間に合わせの人材だからな)
(間に合わせ?)
(政府がここに真に求めてる適材ってのがいるのさ…おっと、これは内密に頼む)

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