▽ 17
「電伝虫ってさァ…」
「はい」
「見てると、目の前でエスカルゴたべてみたくなるなァ〜」
「かたつむり相手に先輩が嫌がらせしたくなろうがなんでもいいですけど、まず先輩は電伝虫使いこなしません?」
おかげで報告が遅れたと言ったら、君には大した問題じゃないでしょと言われ、ため息がわりに隣で真っ白い煙を吐き出す。
「センゴクさんのお小言がうるさいんですよ」
「期待されてんじゃねェの〜?大将就任する話が出てんだろォ…?じゃじゃ馬でも優秀だなァ」
「昇進したら先輩方こき使えますね。あ、それいいわね。その為だけに昇進しましょうかー」
「こき使うならサカズキだけにしろよなァ…調子乗るとほんとに食っちまうぞォ?」
「やだもー先輩ったらゲスーそんなに私が好きですかー」
「見てくれだけはなァ」
「死んだらいいのに。…それよりこの革命軍の亡骸の山どうするんですか。情報掴まないといけないんで、なるたけ生かして捕縛って言ったんですけど」
足元や周囲の死体を見まわして肩をすくめたら、ころっと全員死んじまったんだよと返事。
再び煙草を吸い込み、煙を烏の飛ぶ空に吐き出す。
「先輩がセンゴクさんに怒られてくださいよ?」
「今回の指揮は君だろォ?下のミスも庇うのが上官の仕事だよねェ〜…火ィ頂戴」
箱から出したばかりの、私のとは違う種類の煙草を私が銜えている煙草の先に勝手につけて、火を持っていく。
「ミスしといて…堂々とした火泥棒ですこと」
「手厳しいこって…そう言う自分の方はどうなんだい〜?」
「完璧に任務遂行しましたよ。誰にもの言ってんですか」
「はいはい。悪かったなァ〜」
「クザンからも報告きてるし、あとはサカズキ先輩なんですけどねー連絡つかないんですよ」
「あいつ電伝虫間違って壊したんじゃねェのかァ〜?」
「もしそうだったらサカズキ先輩は帰ってきたら腹パン一択で」
それじゃあ帰ってきてもアイツは地獄だと煙草を銜えて笑うボルサリーノ先輩をスルーして、もう一度かけ直してみようと電伝虫を取り出した。
それを待っていたかのように鳴り出す電伝虫。
なにあの人実は見てたの?それならそれでキモいわね。
そんなことを考えつつ受話器をとる。
「サカズキ先輩?貴方今どこに…」
「ネメシス中将だな…サカズキ中将は預からせてもらった」
「……はあ?先輩を?」
「どうかしたァ?」
「…なんか知らないですけどサカズキ先輩を預かってるそうですよ」
「…はァ?サカズキを?」
誰か知らないがぶっとんだ嘘をつくなあと思っていたら微かにくぐもった声が聞こえ、思わずボルサリーノ先輩と顔を見合わせた。
「……まじっぽいですね」
「みたいだねェ…なにしてんのさァサカズキ」
「ほんとですよ。誰が託児所に預けられろって言いましたか」
これは引き取りにいったら腹パンどころか、鯖折りね。
予想外の事案(…おい、ほんとに電話先の相手は仲間か?)
(仲間にしちゃ辛辣だぞ)
(やかましいわクズ共が!!ほっとけ!!)
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