▽ 16
「包帯痛いんですけどタンレイ先輩」
「痛くしちょるんじゃバカタレェ」
ギリギリと包帯で、私の怪我した腕を締め上げてくる軍医、タンレイ先輩。
インテリ眼鏡のガチムチ男で、サカズキ先輩と双子の兄。
一見似てないが、よくよく見るとそっくりな顔。
…そのせいかむかついてくる。
「医者チェンジしてくれないですか?」
「残念じゃな。俺しか手があいちょらん」
「チッ」
「…どうせまたサカズキと喧嘩したせいじゃろ」
「よくわかりましたね、双子特有のシンパシー?」
「それしかお前が怪我なんぞする理由がないからじゃ」
呆れて吐き捨てるような言葉。なるほど、と頭の中で呟く。
「(…サカズキの趣味がわからん)…少しはサカズキと仲良うする気はないんか」
「私が悪いみたいに言わないでもらえます?向こうも私と仲良くする気なんかないでしょ」
「…………、いや…」
「兄ィ、入るぞ」
タンレイ先輩がなにか言いかけた時に入ってきたサカズキ先輩。
「(我が弟よ、タイミングが悪い)」
「…ネメシス、何故いる」
「普通に怪我の治療ですけど」
「……ふん、あれくらいでか」
「やだー乙女に傷が残ったら問題じゃないですかー」
軽口を叩いて立ち上がる。これ以上苛立ちたくない。
「それじゃタンレイ先輩、ありがとうございました。私は行きますからご兄弟でお話どうぞ」
***
「……兄ィ」
「ネメシスの傷ならたいしたことないぞ」
「ほぅか…」
不器用で鈍感すぎる弟に、もうため息しかでん。
「サカズキ…正直俺はあれのどこがいいんかわからん。じゃが、おどれは…嫌悪以上にネメシスを好いちょるじゃろ」
「ッな!?そがぁなわけが…」
「俺はおどれの兄じゃけェそれくらい見とりゃわかる」
「ッ……最初は…腹立たしかっただけなんじゃ…」
ぽつり、とでかい身体を小さく丸めてそうとだけ言うサカズキは生まれた瞬間から付き合いがあるわけだが、初めて見た。
「…ガキじゃなー。俺みたいに正直じゃったら幾分か楽じゃろうに」
「…それはそれで嫌じゃ」
「なんじゃとサカズキッ!おどれも俺と全く同じ血が通っとるんじゃからなァァ」
ぐりぐりと指で額を押してやれば、痛いと手をはたき落とされた。
血を分けた兄に対してこの暴挙か。
「ぬぐぐ…もういい、勝手にせい!…しかしこうも女の趣味が違うとはな」
「兄ィの性癖が特殊なんじゃ恥を知れ」
「ネメシスを好きなお前のが大概じゃァ。マゾか?マゾなんか??」
瞬間マグマが飛んできたけェ、武装色を纏った。
軍医と狗(サカズキ中将とタンレイさんが暴れ出したぞォォ)
(あら…兄弟喧嘩なんてはた迷惑ね)
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