青春マリンブルー | ナノ


▽ 15





ファイルやら書籍のある海軍の書庫。

ぱらぱらと何度か読んでしまったものを見返して息を吐き出した。


(…やっぱり誰でも入れるここにあるものじゃ、薄っぺらいわね…)


誰でも教わるようなことしか書かれてない。

私は、もっと深い場所までこの世界を知りたいのに。

政府が唱える歴史書や正義をなぞるばかりなのはつまらない。


「(私が知りたいのは…そう、例えば誰も知らない空白の100年の歴史とか……なんてね)」


ここでは絶対に口に出せない単語を思い浮かべつつ本を閉じた。

でも、実際知りたくない人間なんていないと思うわ。

禁止されてるほど人は気になるし、なにより世界の全てを知らないまま、全てを公平に裁くなんてできるわけがないんだもの。


(とりあえずここで探るのはやめ…)

「ようお嬢さん、なにをお探しかな?」

「!?」


また別の方法を探さねばと本を棚に戻したら、いきなり男の声が後ろからして、むんずとお尻をつかまれた。

始めてのことに目を見開いてしまうほど驚き、その手を掴んでおもいきりそいつを背負い投げ

倒れたがたいのいい身体に飛び乗りマウントポジションをとって拳を固めた。


「遺言があるなら今のうちよ」

「たんまたんま!!ネメシスちゃんだろお嬢ちゃん!!」

「馴れ馴れしい痴漢親父ね」

「いや痴漢じゃない!俺はあれだ!情報伝達部長だ!!」

「!………情報伝達部長…?貴方みたいなクソ野郎が?」

「話通りすげえなネメシスちゃん。上官だとわかってもクソ野郎か」

「いきなり人のお尻掴むやつはクソ野郎で十分かと」

「男は女の子の尻があったら触りたくなるんだ。いい尻…それは思わず触りたくなる尻…そう、つまりいい尻してたよネメシスちゃん」

「それが遺言でしょうかクソ虫が」

「ごめん悪ふざけしすぎたから拳おろして」


ひい、とわざとらしく肩をすくめる随分タフな男を見て拳だけはおろしてやる。


「で、本当に情報伝達部長ですかクソ虫」

「女の子がクソ虫はよくないんじゃないかな。あとマウントポジションもどうかと」

「じゃあ変態親父ね。それで、質問に答えないなら腹パンするわよ」

「バイオレンスレディだな…ちゃんと俺は情報伝達部長だよ。名前はアハト・ラヴィーニャ」


…落ちつきを払って言うあたり、嘘ではないらしい。

こんな変態が上官とは、


「首切られたらいいのに」

「疲れると女の子の癒しが欲しくなっちゃうだけのおじさんなんだよ。にしてもこの体勢眼福だな」


やっぱり一発殴ろうかしら。

再び拳を固めようとした瞬間、後ろからがしりと羽交い締めにされ、引き離された。


「なにしてるのさァ〜ネメシスちゃん〜」

「!…ボルサリーノ先輩…」

「そのお人はラヴィーニャ情報伝達部長だよォ?」

「知ってんですか」

「この前仕事一緒にやったからねェ…セクハラでもされたァ?」

「ええ、盛大に」

「やっぱりねェ…ラヴィーニャさァん、相手考えねェといけねェッスよォ〜」


立ち上がるラヴィーニャという男に声をかける先輩。

どうやら本当に部長らしいわね。


「いやあ、噂のネメシスちゃんの尻が最高で」

「先輩、やはり頭を引きちぎる許可を」

「ダメだよォ〜こんなんでも政府の重役でもあるんだからァ〜」

「チッ…」

「ねえ今こんなんとか言ったか?…まあいいけども、ようやくネメシスちゃんを見れたからな」

「私を?」

「ああ…会いたかった。君に」


にっと笑う姿からはなにを考えているか推し量れない。


「なぜ私に…」

「…美人だって聞いてたからさ。またお茶でも飲みにおいで、情報伝達部に」


そう言って去っていくラヴィーニャ部長は周りとどこか一線違う空気をまとっていた。



情報伝達部長

(…ただの変態じゃなかったんですね)
(変態なのは間違いないけどねェ)

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