▽ 13
「昇進おめでとうございます、ネメシス准しょ…中将!」
「あら、ありがとう」
外に出て、真っ黒なスーツに真っ白なコートを翻して歩けば鴎たちがクークーと鳴いて、白い翼をはためかせ青い空へ飛び立つ。
片腕を伸ばせば、手懐けている一羽が腕に乗った。
白い身体を撫でていると、後からすぐに他の三人も出てきた。
今日付けで全員中将だから、珍しく全員、ちゃんと白いコートを羽織ってる。
実力からの抜擢らしいけど、どうにもこの四人でくくられてる気がする。
「ネメシス、お前一人で先行くなって」
「堅苦しくて、いつまでも中にいたくなかったのよ」
「いやもうセンゴクさん呆れてたからね」
「ちゃんと終わってから出て行ったからいいじゃない」
「はあ…ガープさんは爆笑してたけどね…」
「少しはまともにできないのか」
「まともじゃなかろうと中将になれたからいいんですよ」
「たしかに一理あるねェ〜」
そもそもこの四人に、まともな神経があるかと聞かれたら誰一人ないと思うだろう。
だからつまり、怒られる言われはない。
そう思いながら撫でていた鴎を空に羽ばたかせた。
「…意外とお前には動物が懐くな」
「動物は真の強者に懐くからですよ。わかりやすくて好きですね」
「動物好きも、理由次第で女子力ってなくなるんだな。初めて知ったわ」
「ネメシスちゃんは戦闘力より少しは女子力培ったらァ〜?」
「見目麗しいからいいんです〜」
「おぉい!ネメシス!」
「!ガープ中将」
馬鹿な会話を繰り広げていると、ガープ中将がやってきた。
「なんだ、またこいつらといたのか。お前ら仲がいいな」
「「「「違います」」」」
「ブワッハッハッ!照れるな照れるな!」
「…はあ…それよりガープ中将、私になにか?」
本題に戻そうと声をかければ、ガープ中将は思い出したように頷いて私を見た。
「スピード出世の祝いに、今度大物海賊が動いたらお前も連れて行ってやろうかとな」
「!本当ですか?!」
「ああ!おれは娘に嘘はつかねぇ」
「ありがとう!父さん愛してる!!」
真の強者、実力者しかいない、本当の世界に挑戦しにいける嬉しさに思いきり抱きついたら、抱きしめかえしてくれた。
こんな風にしたのはいつ以来かしら……って、あ、そういえば…
ふと別の存在がいたのを思い出して、振り返る。
「…………サカズキ先輩、ボルサリーノ先輩」
「「………………娘?」」
「娘です。でも今のは全て他言無用で。クザンも引き続きね」
「いや自分らで思いっきりばらしたじゃん」
「いいから」
「はいはい…」
クザンの面倒そうな返事を聞いて、とりあえず胸を撫で下ろす。
「別にもうばれても構わないんじゃないのか?」
「ダメです」
「というかおどれ逆になんで言わなかったんじゃァ!!」
「なまりでてますけど…まあ、なんでと聞かれたら、英雄の娘っていわれるのが嫌だからです」
「ああ…プレッシャーとか余計な妬み?そういうのお前案外気にし…」
「するわけないじゃない。違うわよ、照れるからよ」
「「「( 照 れ る !? )」」」
「ねえ、なにその『そんな感情あったのか』って顔。殴られたいなら正座して」
一様に衝撃受けた顔して、腹パンしてやりたいわね。
「だってお前の口から照れるとか…!!」
「当たり前じゃない、父さんは『海軍の英雄』よ。その娘って事実だけでも誇らしいのに、『英雄の娘』なんてよばれたら照れちゃうわ」
「…まさかファザコンとはねェ〜…」
「父親大好きで悪いですか?(他の理由もあるけど)」
「「「(なんだこのギャップ…)」」」
堂々闊歩(とにかく秘密よ。言いふらすことじゃないし)
(わかったわかった)
(面白いのにねェ)
(…)
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