気に入ってる小動物のような子がいるんだけどォ〜。

毎朝、散歩のあと早くに、あの子の明るい笑顔を見ながらコーヒーと新聞を買うのが日課でねェ。

ずっと警戒されているのは知っていたもんだから、十分にわっしの存在に慣れさせてから少し前にようやく会話らしいものをしてみた。

話しかけられると思ってなかったんだろうなァ…最初はどもってたよォ。それがまた可愛くってねェ…


***


「…つまるところ、ボルサリーノはその子が好きなの?」

「うん〜好きだねェ〜」


珍しく他人のことをデレデレと語る、同僚のボルサリーノに直で切り込んでみたら

笑顔でこれまた珍しく、ストレートに返事が返ってきた。


「じゃあそんな回りくどいことしてないでメアドくらい渡してみれば?」

「え〜いいのォ〜?」

「なんで俺に許可とんのよ」

「ん〜…まあどうせェそろそろバレる頃合いだし…」

「ボルサリーノォォ!!!」


ボルサリーノの言葉を遮り、同じく同僚のサカズキが部署に怒鳴り込んできた。

俺に怒鳴りにくることは多々あってもボルサリーノには珍しい。

今日は珍しいこと続きだな。


「というか、ボルサリーノなにやらかしたの?」

「うーん…多分さっきの話と関係あるかなァ〜」

「え、コンビニの子?」

「!コンビニ…やはりおどれかッ」

「おォ〜…やっぱりばれたねェ〜」


怒り心頭のサカズキと、へらっと笑うボルサリーノ。

一体なんだというのか俺は全くついていけない。


「どうしたのよサカズキ。説明して欲しいんだけど」

「…こいつがうちのアヤに近づきおるから…」

「え、アヤに?それとコンビニがどう関係して…」

「鈍いなァ〜…そのコンビニの子がアヤちゃんなんだよねェ〜」


ボルサリーノが笑いながら言った言葉に驚きで思わず立ち上がる。


「えっ…アヤがバイトしてんの!?なんで俺に教えてくんないの!!」

「言ったら行くからじゃバカタレ…そもそもこいつにはアヤの存在も教えた覚えもないわい」

「わっしはたまたまいつも行くコンビニで見つけてねェ〜。気になって調べたらサカズキの養子でびっくりしたよォ〜」

「調べたのかあんた…」


気になったから調べたとか怖いんだけど、それはそれで。


「けど、そうなるとボルサリーノが好きなのって…」

「うん〜…アヤちゃんだねェ〜。可愛いよねェ〜」

「へー……っぇえええ!?年の差考えろよ!!つーかアヤはダメ!!」

「男に二言はなしだろォ〜」

「男にはなくても俺にはあるの!!」


アヤなら話は別だ。

アヤは可愛い妹分みたいなもんだし、それを同僚である自分より歳上のおっさんにくれてやる気はない。


「ケチぃこと言うなァ〜」

「ふん…どちらにせよアヤのお前に対する認識はヤクザの客じゃけェ靡きはせん!」

「ぶふぉっ!」

「おォ〜…まだヤクザだと思ってるんだねェ〜…」


そろそろ潮時かなァ、と呟いたボルサリーノに、なんか嫌な予感がした。



新しいペンとインクをあげようか

(不安で心もインクも詰まるなら、もう何も詰まらないように)