あれからコンビニで毎朝、黄色のヤクザだと思われるおじ様と短い会話を交わすようになってしばらくが経った。
基本的に軽い挨拶やその日の天気の話だけど、無害な会話だし
正直、店に一人の不安を一瞬でも紛らわすにはいい時間になっているのも確かだった。
私の頭を悩ませている人より、無害なヤクザさんのほうがいいんだもの。
「…(やっぱり…またきてる)」
バイトを終えて、学校からマンションに帰り、ポストを開けるとそこには黒百合のミニブーケと、差出人の名前がない手紙が入ってた。
ここ一ヶ月近くなる、私の悩みの元凶だ。
また、と思ってしまうくらい、この状態に慣れ出している自分が怖くなる。
でもこれを過保護な私の養育者に言ったら、無用な心配をかけてしまうかもしれない。
「(まだストーカーって決まったわけじゃないしね…)」
実害があるわけじゃない。
ただ、私が勝手に気味悪がってるだけ。
だからブーケと手紙を持ち帰り、ばれないようにベランダで焼き捨てている。
そして不安なまま、一人で養父の帰りを待ちながら平日の昼間をすごす。
「(早く帰ってきてください…サカズキさん)」
風に溶けたはずの焼き捨てた黒百合の匂いが、いつまでも残っているような気持ち悪さに一人耐えた。
幸せなだけのお話を頂戴
(やっぱりヤクザのおじ様と話してる時間の方が、怖くてもずっといい)