ガラス越しに店の中を見る。
別に中に入りはしない。
だって俺がいったら、かわいい彼女が俺を気にしてしまって、仕事に集中できなくなってしまうかもしれないじゃないか。
だからいつもここから働く彼女を見てた。
悪い虫がつかないように。
なのに彼女は、最近あんな常連客のおっさんに夢中になって…浮気はよくないよね。
手紙だけじゃわからないなら、わからせてあげなきゃだめかな。
***
「……」
今日が休日でよかった。
あんな突然のことがあって、授業なんて出る気持ちになれない。
そう思いながら肩につもった雪を払いながら家に入ると、いつもはいるはずのサカズキさんがいなかった。
テーブルの上を見れば、達筆な字で、職場に呼び戻されたとあった。
多分事件なんだろう。
「(警察さんは大変だな)」
そう思いながら息を吐き出した時、玄関のインターホンが鳴る。
誰だろうと玄関に行き、覗き穴を見れば、知り合いでもなければ宅配の人でもない男の人が立っていた。
なんとなく怖くて声を出さず開けずにいると、再びインターホンが鳴り、ガチャガチャとドアノブがまわされた。
ますます怖くなって、息を殺す。
しかしガチャガチャと無理やり開けようとする音が響く。
「(怖い、怖い。誰か…サカズキさん……ボルサリーノさ…)」
ほとんど無意識に名前を内心で呼びかけた時、玄関の向こう側が騒がしくなる。
一際大きな物置がしたかと思うと、扉の向こうは静かになった。
「…?」
不思議に思って顔をあげると、カチャッと鍵があく音に再び息を止めた。
「っ、や…」
「アヤちゃん、大丈夫かい?」
「…へ…ぼ、ボルサリーノさん…?」
扉を開けてきたのはさっきの男の人でなくて、朝方見たスーツのボルサリーノさんだった。
怖かったねぇ、と抱き上げられた頭をなでられるが、突然のことにいまいち意味がわからない。
すると、下から確保しました!という声と、サカズキさんの誰かに怒鳴る声がきこえてきた。
「ぇ、あ…?」
「おォ〜…申し遅れたねェ〜…わっしはこういう仕事してんだよォ〜」
ぱっと見せられた手帳。
「けーさつ…てちょう…けいさつ……」
ぼんやりとした頭のまま、書いてある言葉を繰り返して、覚醒し、叫んだ。
「警察ッ!?」
「そうだよォ〜…アヤちゃん、ストーカー被害は早めに警察に報告しなきゃダメじゃねェのォ」
捜査中に通りかかってよかった、と抱きしめられながら、
告白してきたばかりの人に抱きしめられてるとか、何故今までいってくれなかったのかとかより、ただただ突然の事態の連続に目を回した。
現実を綴る物語も転機を迎える
(…アヤちゃ〜ん?…おやァ〜…気絶しちゃったねェ〜…)
(ボルサリーノ貴様ァ!お前もアヤから離れんかァ!)
(サカズキは、わっしよりちゃんとそのストーカー野郎締めあげといてよォ〜)