「ただいま」

「おう。今日遅かったな。バイト先でなんかあった?」

「まあ軽く迷惑なお客様ぶん殴ってきただけ」

「なにがあったら飲食のバイトでお客ぶん殴る事態になんの?」

「それはほら、私だから」


鞄を放り投げて、伸びをするネメシスは笑顔だが、どっかやっぱり不機嫌そうだ。


「お前それで企業の仕事とかできんのかね…」

「クザンに言われたくないけど、無理だと思うわ。嫌な上司の下なんかいられないと思う」

「俺はまだ柔軟よ。お前より」

「…ま、そうかもね。じゃあ社会はどう判断してるか確かめましょうよ」

「?」


なにを言ってるのかと見れば、ネメシスは二枚の別々の封筒を取り出し、片方を差し出してきた。

宛名を見れば俺の名前と、送り主の名前。


「…この前面接行った企業からじゃん」

「私も別の会社受けたはずなんだけど、同時に届いたみたいね」


どうせだから一緒に開けましょう?

そういうネメシスにうながされ、二人で目線を合わせてぴりぴりと封筒の封を切り、紙をとりだす。

緊張の一瞬。


「…どう?社会はなんて?」

「……お祈りメールだよちくしょう」

「残念、同じよ」


社会不適合なの、露見してるみたい。

ネメシスがぐしゃりと紙を握りつぶし、ゴミ箱に放り投げた。


「…ナイスゴール」

「ありがと」


ばふっと俺の座るソファの隣に腰かけるネメシス。


「俺たちやばいよな…」

「いざとなったら先輩たちでも入れた警察にいくしかないわね」

「もうアヤに心配かけるくらいなら、それでいい気がしてきた」

「あら、少しは責任感持つようになったのね」

「…まあ、アヤとゆくゆくは一緒になりたいし」


アヤと会うまでは考えたことなかったけど、最近はよく考える。


「…だったらまず浮気癖やめたら?」

「…そうしたいんだけど…ちょっと最近ねー…アヤの嫉妬する姿、可愛いなって」

「うわ、監禁拘束プレイのエロ本見つけたときからきもいとは思ってたけど、やっぱりきもいわね」



先を考える金曜日

(え、酷くね?つーか見たの?)
(うん。見た)
(その時点でお前もなんかキモいよ)
(買う貴方の方がキモいけど)