「アヤがすごい昨日かわいくてさー」
「そう」
「いやいつもかわいいんだけどね」
「へえ」
大学の食堂で熱く恋人について語るクザンに生返事を返しつつ、ネメシスは個人的に好きらしい英字新聞を片手にコーヒーを飲む。
「なんであんな可愛いかね?天使なのかな?いやもうでも誘惑してくるから小悪魔かもしれない…ねえ、お前きいてる?」
「ん?聞いてるわ。今日は夕飯かに玉がいい」
「聞けよ」
「…冗談よ。聞いてるわよ。あれでしょ?アヤちゃんがベッドの上で喘いで可愛かったんでしょ?わかったわかった」
「確かに可愛かったけど俺そこまで言ってないから」
新聞を置きあっけからんと放ったネメシスの言葉にもう諦めたように淡々と返すクザン。
するとネメシスが思い出したように口を開いた。
「そういえばクザン、ゼファー先生から伝言」
「え、それ先に言ってよ。なんて?」
「卒論テーマなにか考えたのかって」
「あ、もう聞きたくない」
「聞きなさいよ」
両耳を塞いで突っ伏すクザンの頭をネメシスが相変わらずの笑顔で軽くはたく。
「ちょっとバカになるじゃん」
「安心して、もうバカだから。それよりゼファー先生のところには行きなさいよ?」
就職以前に卒業できないとか笑えないから。
と、ネメシスが笑いながら言うのを聞きながらクザンは嫌そうに呻き声を上げた。
現実に返る木曜日
(クザン、もう少しお前は焦れ!)
(焦ってまーす)
(態度に示せ態度に…まったく、ネメシスはもうとっくに計画書出してるぞ)
(え、まじっすか?!)
(なんだ知らなかったのか?)
((あの裏切り者…!))