「(一人が1番気楽ね)」


今日は講義もバイトもない日。

現実を生きるのがつらい私のような社会不適合者には、待ち望んだ安息日だ。

クザンも丸一日平日デートで、どうせ明日の朝まで帰らないだろうし、日がな一日ソファで読書やらしたい事に耽っていられる。


「あー…最高だわ水曜日」


ぱたん、と読み終わった本を閉じ、さてととソファから身体を起こす。


「クザンの部屋のエロ本物色しましょう」


趣味が垣間見れて地味に面白いのよねエロ本。しかも最近はアヤちゃん似の子ばっかりだし。


「(あのどうしようもなかったプレイボーイが本気になるなんてねー)」


ほんとに他人の恋愛は面白いわ。


***


ぶるっ


「(なんか寒気が…)」

「…クザン先輩?」

「あ、ああ…大丈夫。春でもまだ冷えるなって」

「そうですね…クザン先輩低体温だし、余計でしょうか?」


心配そうに見上げてくるアヤがたまらなく可愛いけど、大体俺の寒気の原因など昔から八割は決まってる。ネメシスだ。


「(またよからぬこと考えてんじゃないだろうな…)」

「…クザン先輩っ」

「!うぉっ…アヤ、どうしたの…?」


ぼすっとアヤが抱きついてきたのを外で珍しいな、と思いながら撫でる。

すると拗ねたようにも、悲しそうにも見える緑の瞳とかち合う。


「…他の時は構いません…でも、私とのデート中くらいは、他の女の人のこと考えて欲しくないです…」


今くらい、私のことだけ考えてください。

普段は、世間一般で浮気って言われそうなことしても文句を言わないアヤの、数少ないせがむような言葉に射抜かれる。

考えてたのは女の子じゃなくてネメシスについてだとか、もはや全てどうでもいい。


「(やばい…アヤ可愛すぎてにやけるんだけど…)」

「わかりましたか?」

「うん…大丈夫。アヤのことしか考えないよ」


自分の悪い癖で悲しませてる自覚はある、可愛い恋人のお願いだ。

本当に1番尊重していることを示さねば、と身体をかがめて、自分より遥か低い位置にある頭のてっぺんにキスをした。


安息の水曜日

(アヤとのデートの最中に、ネメシスなんかに思考を邪魔されてる場合じゃない)

(うっわ、拘束監禁プレイとかまで増えてわね。しかもこれもアヤちゃん似だし)