シェアルームに差し込む穏やかな日差しの中、アヤは困っていた。


「…」

「アヤ、今日もかわいいよ」

「はぁ…どうも…それより、あの…」

「私のことは気にしないで」


同じリビングルームでコーヒーをすすりながらノートパソコンのキーボードを叩くネメシスを気遣わしげにチラ見するも、あっさりとした返答がかえってくる。


「(気にするなと言われても…)」

「ネメシスは空気中の窒素だと思っていいから」

「窒素ってそんな…」

「ネメシスのこと考えるより、俺に集中してよ」


ネメシスを全く意に介さず、自分を膝にのせてだきしめ頬ずりをしてくる恋人にアヤは嬉しさ半分、恥ずかしくて困っていた。

元々彼女は穏やかで控えめだからか、人前でこんなにいちゃついたりするのは苦手なのだから当然だろう。

しかし、やめてくれる様子も一切ないので、仕方なくされるがまま状態でいる。


「…っ、ぁ!?」


すると徐々に自分を抱きしめている手が身体をいやらしくなでてきて、アヤは思わず声をあげた。


「あー…かわいい」

「ちょ、クザンさん…!?流石にだめですって…!!」

「んー?なにが?」

「ん、っ…なに、って…」


耳まで真っ赤にしてふるふると震えるアヤの姿が、クザンの中の秘めた加虐心をくすぐるのか、更に手を進めようとしたその時。


「ちょっとクザン、さすがにそれはリビングでやめて」

「!(ネメシス先輩…!助かっ…)」

「リビングの床とソファを貴方のイカくさい体液で汚さないで。やるならホテルか外か自室でお願い」

「(そこだべか!?)」


うんざりした顔で言われた言葉には、一切行為自体を止める言葉はなかった。


「んー…じゃあ外行くよ」

「(そして選択はなぜ外なんですか!)あ、ちょ、クザンさん離して…ッ」

「…アヤ、たまには刺激って必要だよね?」


にやっと笑ったクザンの表情に、ぴしっと動きを止めたアヤは、そのまま抱えられていく。

すぐに窓の外から助けを求める声が聞こえてきたが、その声が遠ざかっていくのを聞きながらネメシスは

ただ空になっだマグカップを片手に、キッチンへ消えて行った。



今ある幸せを詰めた土曜日

(野外プレイのエロ本もあったからさりげなく進めたら本当にいくなんて…いやだわケダモノね…)
(…って、あら…また卵が明日の朝分しかないわ……買い物は…まあいいや。休みに外出るのめんどくさい…)

(そしてまた同じような日曜日がやってくる)
(まるでソロモン・グランディの呪いじゃない)