ほんとに正義の海軍なのか怪しいくらい顔の怖いおじさんたちを連れていった、小さい女の人の出て行った扉を眺める。
「…どろぼうねこ、じゃなさそう」
「それは絶対に違うからね、アヤにひどいこと言うのやめようね」
「そうだな…全てお前が悪いしな」
「センゴクさん、お願いだからチクチク責めないで」
「………やっぱり、パパがそういう人なだけね」
「そういう人ってなによ?君さりげなくキツイね」
正直、残念だった。
あの人が、ママが言うみたいなパパをとった最低な女だったなら私は憎むことで生きていけたのに。
あんな人だと、憎めないよ。
「……コルク、だっけ?あのさ、君には悪いけど…正直君の亡くなった母親のこと、全然俺思い出せないんだわ」
「…うん…だと思った。パパが女癖悪いんでしょう?ママが勘違いしてて、パパは体だけだったんでしょ」
頭をかきながら目の前にしゃがみこんで話しかけてくるパパにそう言えば、眉を潜められた。
「…子供がそういうセリフどこで覚えるの」
「ママの文句とかいつも聞いてたら覚えた…それにそれくらい分かる。今は、あのお人好しな人、お目当て?」
「アヤは…好きだけど、そういうんじゃなくてね、本気で惚れてるよ」
「本気……すごいねパパ。まったく信用できない」
「く、…っ!」
「ちょ、笑わないでもらえませんか!?」
肩を震わせるうしろの鴎帽子のおじさんに、もう、と文句を言うと、パパは私にまた向き直った。
同じダークブルーの眠たそうな目が軽薄じゃなく、真剣そうに見えた。
「信じる信じないはもう任せるけどさ、俺はアヤにはね、本気なんだよ」
「…遊びじゃなくて?」
「うん」
「…結婚したいくらい?」
「勿論」
………即答してくる。
パパは信用はできないけど、正直な人なのかもしれない。
それに確かにさっきの女の人は、優しかった。
ヒステリックに怒鳴ったりしなさそうだし、叩いたりもしなさそう。
ママもしてくれなかったのに、頭を撫でてくれた。
パパが好きになっても、仕方ないと思ってしまう。
邪魔なのは私かな。
「…そっか……わかった」
「じゃあ、アヤのことこれから新しいママって認めてってくれる?」
「……え?なんで」
「え?だってこれから俺と暮らすでしょ?」
……邪魔じゃないの?
「いても、いいの?」
「放り出すわけにはいかないよ。ただ、アヤと仲良くしては欲しいかな」
「…あの人ならいいよ。あとは、ご飯が美味しかったら文句ない」
「なら、心配いらないかな」
安心したような表情のあと、大きな掌で撫でられた。
今日はよく撫でられる日だ。
「(……きてよかったかも)」
雉の娘
(というわけでセンゴクさん、俺がちゃんと面倒みますよ)
(…子供を育てられるのか?お前に)
(まあ、アヤもいますからなんとかなるでしょ)