「(ようやくこの日がきた…)」


これから行われることに必要な証拠と書類を抱えて、会議場に足早に向かう。

沢山止められたけど、今回一度切りという約束で漕ぎ着けた今日という日。

王下七武海であるドフラミンゴさんの審問会。

彼がドレスローザの隣島の島民を虐殺し、一つの島を滅ぼし、フルールという少女を誘拐したのは間違いない。

ここまで暴くのは、とても長かったように思う。

彼女も随分と待たせてしまった。

けれど、今日で全て終わる。証拠は十分ある。


「(フルールさん…助けますからね、必ず)」


ぎゅ、と書類を抱きしめて、重々しい空気が漏れる部屋の中にはいった。


***


「情報伝達部ショウガン・アヤ部長…王下七武海に対する審問を開くということは、それなりの不正の確信があるということでいいのかね?」

「はい…勿論です」

「…君は忘れているかもしれないが、王下七武海にはある程度の略奪行為が許されているんだがね」

「しかし…善良な島民全てを殺害し、島を滅ぼした略奪行為はやりすぎと言わざるをえないかと」


集まった政府の人たちから降りかかる冷たい言葉に胃をキリキリとさせつつ、堂々と振る舞う。


「馬鹿な。そんな大きな事件を七武海入りしたばかりの頃にドフラミンゴ氏が起こしたと?証拠がどこにあるんだね?」

「証拠なら、私が密かに2年かけて調査いたしました。それに、この私が調べた証拠を裏付けてくれるだろう証言者をこの場に呼んでいます」


部下に視線をやり、中に証言者を通させた。

入ってきた、久しぶりに見る長い緑の髪の美少女に小さく微笑んでから、審問官たちに向き直る。


「…こちらが証言者であり今回の事件の概要を全て知る被害者、フルールさんです」

「…」


彼女の登場に、少し上の方たちの空気が動揺したものに変わった気がする。

やはり知っていて、騒ぎにせず隠し通すつもりだったのか。


「(でも大丈夫…彼女に証言してもらって、それで終わる)」


情報の隠蔽工作も情報伝達部の仕事かもしれないけれど、それでも私は、そんなことをしたくはないから。

どんな理由があっても、許してはいけないことだと思うから、1人でだってやれるだけやるんだ。


「…それではフルールさん、正直な事実の証言をお願いします」


そういってフルールさんを見れば、俯いて視線をはずされた。

なにかおかしい。違和感を感じる。

そう思った時にはもう、フルールさんは話口を開いていた。


「……この人の言っていることは、全て…間違いです…」


その予想外の一言に、私の中の積み立ててきた何かがつき崩された音がした。



役者が望むは救済より茶番劇

(見つけ出した真実を、嘘が固めて行く)

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