母の死の悲しみも時間の中に少しずつ溶かしだしてしばらくが経った頃ー
「アインさん、ビンズさん、こんにちは」
「!アヤ部長。お疲れ様です」
「む、アヤ部長!お久しぶりです!!」
ゼファー先生の教え子にあたる新兵の二人を見つけてにっこりと笑って挨拶をすれば
向こうも礼儀正しく挨拶してくれた。ほとんど年齢が変わらないと思うんだけど、何度言っても階級に合わせてくる、真面目なお二人です。
「今回は遠征だそうで…気をつけてくださいね」
「ありがとうございます」
「勿体無い言葉です…!!」
そこに遠くから、早く乗り込めという声がかかる。
そろそろ出港のようですね。
「それでは失礼します!」
「失礼するでござる!」
「ふふ、行ってらっしゃい」
かけて行く二人の背中を笑って見送り、その先にいたゼファー先生に敬礼をとって、その場を後にした。
穏やかな日差しに航海の平和を願った。
***
船が出立してしばらく日が過ぎたあと、恐ろしい連絡に顔色が変わった。
緊急の連絡内容を頭に入れてセンゴクさんのところに走る。
「はぁっ…はあ…センゴク元帥!!」
「!アヤ、どうした!?」
「ゼファー先生率いる新兵を乗せた訓練船から緊急連絡がたった今きました!能力者の海賊の一味に襲われたようです!!至急救援を!」
執務室に飛び込み、叫ぶように必死で伝える。
すぐにセンゴクさんは状況を察して、全体に指令を出してくれた。
「(…どうして悪いことは次々起こるのでしょう…どうか、どうか無事でいて…)」
その日は、私の祈りをかき消すような雨だった。
言葉を遮る天の恩恵
(結局、帰ってきたのはゼファー先生、アインさん、ビンズさんの三人だけ)
(それでも生存者がいてくれただけ嬉しかった)
(たとえ、私の頭をいつもなでてくれていたゼファー先生の片腕がなくなっていても)
(命にはきっと変えられないものだから)
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