マリンフォードの一角に、ようやく待ち望んでた建物が出来た。

想定通りに改装された、使われてなかった建物も、綺麗にされて生き生きとしているように見える。


「わあー!綺麗!」

「本当にここ住んでいいの?」

「勿論、今日からここが皆さんのお家なんですから」


中を駆け回ってはしゃぐ子供たちにそう答えれば、嬉しそうな歓声。

その姿にこちらまで嬉しくなる。


「全く…みんな子供なんだから」

「ふふ…さて、キールちゃん。皆を集めてくれますか?そろそろ暮らしていく上で皆のルールを決めないといけませんから」

「はい!わかりましたママ先生」


そして子供たちを集めて、生活の決まりを話しはじめた。


***


「…マリア、孤児院の開設おめでとうございます」

「ありがとうございますファナさん…それに副院長を兼任していただくことを引き受けてくださったことも…」


再び自由に院内を見て遊ぶ子供たちを見ながらファナさんに頭を下げようとすれば制された。


「信者に感謝はいりませんよ…私は貴女という存在に陶酔し、貴女から慈愛という名の恩恵を賜り、そして貴女に殉ずるために生きているのですから」


…優しく手をとってくださるファナさんに、どんな言葉を返せばいいのかわからなくて、やんわりと笑い返す。

ファナさんはどこまでも私に尽くしてくれて、やっぱり戸惑ってしまう。

私は人魚だという以外、特になんでもないごく普通の娘なのに、聖母だなんて。


「…(私はファナさんの思うような素晴らしい人じゃないのに)」

「…?どうかなさいましたか」

「…いいえ…ところでファナさん、世界貴族様達とお会いするお話は…」

「ああ…日程が決まりましたとのことです」

「…わかりました」


シャルリア宮様からの御要望だから断れないとは言え、世界貴族様と会うのは心が折れてしまいそうになる。


「……私は、マリアの心に悪い影響がないか心配です」

「…大丈夫ですよ。何度もお会いしていますから」


けれど、今回は一体なんの御用なのでしょう…?


「(おかしなことがなければいいのですが…)」

「アヤー、遊びに来たよ」

「…ママ、こんにちは」

「!あら、クザンさんにコルクちゃん…」

「はい、開設祝いね」

「まあ…!ありがとうございます…コルクちゃんも、皆と遊んでいってくださいな」

「うん…」


現れた二人に浮かんだ不安を隠して、微笑みを返した。



子供達の始まる場所

(あ!こ、コルクちゃん!)
(…ヘルメス…久しぶり)
(う、うん!あの、い、一緒に遊ぼう?!)
(?…いいよ)

(あらら…もしかしてあの子さ、コルクに気がある?)
(ふふ、可愛らしいですね)

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