モモンガ中将からの上層部が集まる会議への要請がきた瞬間、喜びのあまり勢いよく立ち上がってしまった。
夢にまで見ていたのだ、あの方にもう一度会える日を。
どこまでも清廉で尊く、愛おしいあの方に。
その人に仕えるためだけに、私は駆け上がってきたのだから。
モモンガ中将には後からすぐに参りますと伝え、浮き足立つ心を抑えつけて再会に失礼がないように準備を始めた。
***
カツン、と靴音と共に会議室に現れた人は私を見るなりすごく嬉しそうな顔で目の前に歩み寄ってきた。
「『聖母様(マリア)』…!!」
真っ赤な薔薇をばさりと差し出された。
その姿には見覚えがあった。
何年前かに、海賊から助けた神父様だ。
「ファナティス…さん?」
「私を覚えていてくださったのですか…!」
流石私の救世主!愛しています!
彼がそう叫んだ瞬間、眩しい光のあと彼の足元が爆発した。
「!?ボルサリーノさんッ!?」
「おォ〜…思わず手が滑ってねェ〜」
手が滑るとビーム出ちゃうんですか!?
あまりのことに動けずにいると、爆発の煙の中からファナティスさんが現れた。
「…黄猿大将、いきなり驚くではありませんか。薔薇も駄目になってしまいましたし」
「そりゃァよかったねェ〜…でもさっきの行動はいかがなもんかなァ〜」
にっこりと笑い返しているものの、殺伐とした雰囲気。
「…大将、私のマリアへの愛は俗世的なものではありませんのでご安心を。マリアに捧ぐ私の愛と忠誠は、もっと崇高で気高いものですので」
「…アヤちゃんはマリアとやらじゃないんだけどねェ〜…」
「…私のマリアですよ、間違いなく彼女は」
「……」
「あ、あの…とりあえずそのお話はそこまでで…ファナティスさんは…」
「ファナで構いませんよ、マリア」
「じゃあファナさんは…私の部下になってくださる気があるんでしょうか?」
ますます悪くなる空気に、思わず割り込んで話を戻す。
「勿論です。むしろ私に新たな道を示してくださった貴女の下で働くことこそが私の願いなのですから」
「…そうですか…」
「アヤちゃん、部下にするならもっといいのがいるんじゃないかなァ〜?」
「…モモンガ、この男の実力はどうなんじゃ」
「はっ…実力は確かかと」
「性格は問題ある気がするんだけどな…アヤどうするの?」
「…ファナさんが私の所で働きたいなら…是非部下になっていただきたいです」
実力も、モモンガさんのお墨付きなら問題ないと思う。
そう言えばお三方は少し不満そうにしたが、センゴクさんはわかったと頷いてファナさんに視線をうつした。
「それでは…今日付けで、トガ・ファナティス大佐を前倒しで准将に昇進させ、情報伝達部へ移動とする!」
「謹んでお受けいたします」
敬礼をし、柔らかく微笑んだファナさんにお願いします、と微笑み返した。
新たな役者
(いいなー)
(おやァロス〜…わっしのとこじゃ不満かい〜?)
(そりゃ不満しかないでーす)
(そうかい〜椅子にしてやるから喜びなァ〜)
(俺だけとんでもねェブラックな配属先!!)
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