「…あ、誕生日じゃん…」

「え?」


ネクタイを緩め、ボタンを2、3個はずしたあとにふとすごい大事なことを思い出した。

明後日はアヤの誕生日だ。

今日はプレゼント買いにいこうと思ってたのに、急なセフレからのお誘いにちょっとすっぽ抜けてた。


「今からでも間に合うか…ごめん、やっぱ今日無理だわ。明後日誕生日の子のために買い物行かなきゃなんないし」

「はあ?!ちょっと、誕生日ってなによ?柄でもない…誰かの誕生日より私じゃ…」

「まあ…たしかに柄でもないけど、俺にしたら世界で一番可愛い子の誕生日なんだよね」


だから君とはまた今度、と身なりを正しながら出て行けば、後ろからまくらを投げられた。

これはもう会ってくれないかな。

まあそれならそれで仕方ないね。

アヤの方が他の女の子との関係失うより大事だし。


***


世界会議も比較的無事に終わり、いつものように膨大な情報と格闘する職務に戻った。

そんな折に…


「アヤ、お疲れ」

「あ、クザンさん、お疲れ様です」


扉の向こうから現れたのは、クザンさん。

この人には小さすぎる私の机の前までくると、しゃがみ込んでにんまりとした。


「どうしたんです?そんななにか企んだような笑みして」

「いんや、今夜空いてるかなって。20の誕生日でしょ?大人の行く店つれてってあげようかなって」

「あー…それってもしかして、街のバーですか?」

「…あれ、わかった?」


やっぱり、と思わず笑ってしまえば怪訝な顔をされた。

なので、説明をしようと口を開く。


「ボルサリーノさんとサカズキさんも、先ほどそれぞれ誘いにいらっしゃって、一緒にいくことになりまして…」

「え、そうなの?あいつら…」

「ふふ、まさかクザンさんもいらっしゃるなんて…クザンさんも一緒に行きます?」


誘ってみれば、すぐさま勿論と帰ってきた。


「じゃあお二人には伝えて…」

「いや…自分で言っとくからいいよ」

「そうですか?ならお願いします」

「うん、それじゃあまた夜にね」


私の頬にキスをしてからクザンさんは出て行った。

それを見送り、夜の楽しみに期待を膨らませながら、再び仕事に手をつけた。


***


アヤの部屋を出て向かった先は将校用の談話室。

絶対あの二人も互いに抜け駆けしようと誘いがかぶった時点でここにきているだろう。

そう確信して扉を開ける。


「ちょっとサカズキ!ボルサリーノ!抜け駆けなんてひどいじゃない!」

「…そういうお前も誘いにいったんじゃろうが」

「ということはクザンも来るんだねェ…」


もうわかってたけど、と深い息を吐き出すボルサリーノ。

ため息つきたいのはお前だけじゃねェと思いながらソファに腰をおろした。


「アヤと2人きりで祝いたかったんだけど…やっぱり無理か…」

「……ふんッ」

「仲良く祝ったげるしかないねェ」

「「「(…まだ俺/わし/わっしには贈り物があるしな…)」」」



大人になる君のため

(皆さん最初から示し合わせていたなら、一人ずつ言いに来なくてもよろしかったのに)



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