世界会議。
世界政府加盟国の各国の王、代表者が集まり世界の問題などを話し合う、四年に一度の会議。
世界政府の管轄にも属し、政府や各国の情報一切をとり纏める情報伝達部の部長である私も出席義務がある、長丁場の重要な会議だ。
そして部長としては初参加となる私の10代最後を締めくくる、最も大きな行事でもある。
「新調したスーツ、ちゃんと似合ってますかね?」
「ええ、よくお似合いですよ部長」
政府の情報伝達部の腕章をつけて、付き添いの部下をつれてマリージョアの廊下を歩く。
「はあ…うまくやれたらいいんですが…緊張してきました」
「大丈夫ですよ。貴女は情報を把握する、私たちの優秀なボスなんですから」
「…ありがとうございます」
年上の部下の言葉に少し勇気付けられ、微笑みを返す。
私は私なりにしっかりやろう、と会議場へと向かった。
***
「…はあ…」
「本日はお疲れ様でした、部長」
しゅる、とネクタイをゆるめて脱力する。
今日は長い緊迫した会議だった。
壮年の国王様たちからの見定めるような目にめ、値踏みされるような目にも、一瞬肩がはねたりした。
情報からの意見を求められたときは、息が止まりそうなくらい緊張した。
だけど、それなりに上手く行ったように思う。
手応えはあったと。
まあ、まだあと数日は同じ緊張感を味わうのですが。
「(ただ、ワポル様の態度には困りものですね…)」
たしか、家出した時に最後にいった国の国王様だ。
資料からいい印象はなかったが、あそこまでとは。
会議、だけでなく国政をなんと考えているのだろうか。
「…私は少し息抜きに庭でも歩いてから帰ります」
「…了解しました、船でお待ちしています。お気をつけて」
「はい、わかりました」
そして、部下と分かれて歩き出す。
***
「はあ…気持ちいい…」
マリージョアで唯一気に入っている中庭に足を運び、澄んだ泉に足先をつけて息を吐く。
膝の上にのってきた小鳥さんが、不思議そうに小首を傾げてきたので、少しだけ笑って指先で頭をなでた。
「貴方はここからでも、空を泳いでどこにでもいけるのですね」
「ぴ?」
「ふふ、空を泳ぐってどんな気持ちなんでしょうね」
そう言ってみれば、小さい羽根ではばたいて、一緒においでよと言うように私の髪をひっぱりだす。
その可愛らしい行動に、つきんとした切なさと微笑ましさ。
「…ありがとうございます、小鳥さん」
「お姉さん小鳥と喋れるの?」
「!」
突如かかった声にびっくりして振り向けば、そこには濃い水色の髪の少女。
ネフェルタリ王家のお姫様だ、とすぐに気付く。
「ネフェルタリ・ビビ様…」
「私の名前知ってるの?お姉さん」
「勿論…私はショウガン・アヤです」
「アヤさん…もしかしてアヤさんて妖精さん?」
「え?」
「小鳥さんと仲良く喋れてるし、足元きらきらしてるから…」
その言葉にしたを見れば、確かに水の中の足が輝きを帯びていた。
まさかくるなんて思わなかったから見られちゃったなあと思いながら、そばではばたく小鳥と顔を見合わせた。
「ビビ様…このきらきらの事はどうか内緒でお願いします」
「やっぱり妖精さんなのね!わかったわ、言わない!」
「(会議期間中、妖精さんでいなければいけない感じですねこれは)」
笑顔を輝かせて喜ぶ姫様の夢を壊すわけにもいかず、笑い返した。
「…ところでビビ様、父君様のところに戻らなくてよろしいのですか?」
「あ、戻りたいんだけど、迷っちゃって…」
「そうですか…アラバスタの方々ならあちらをまっすぐ行けばいいと思いますよ」
廊下の先を指せば、ますますビビ様は顔を輝かせた。
「妖精さんはすぐわかるのね!」
「あ、あはは…ええ、まあ…」
本当はくる途中に一団を見かけただけなんですが。
という真実を胸に秘めて微笑めば、ビビ様はありがとうと言って走っていった。
「妖精に間違われる日がくるとは…子供の想像力はすごいです」
「ぴぴっ」
小鳥と一緒にくすぐったいような暖かな気持ちで、くすくすと笑った。
疲れも吹き飛びました、ビビ様。
突然のFairy Tail
(ただいま戻りました)
(おかえりなさいませ、部長)
(…ねえ、妖精ってほんとにいると貴方は思いますか?)
(え?)
(…ふふ、なんでもないです)
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