重たい任務を申しつけられて、なんとなくふらふらした足取りで廊下を歩く。

取引の上で、キョウカさんの身柄は、ドフラミンゴさんの元で保護されるらしい。

取引内容は聞くどころではなく、知らないけれど。


「(レヴェリー前に、こんな重い話を…)」


私に、死ぬまで秘密を護れということなんだろうか。

というか、そのために私は不相応なここに呼ばれたのか。

長い謎が、解けたけれど、すっきりより、不安と恐ろしさばかりが募る。


「(私が死ぬまで、世界を脅かしかねない秘密を護る…)」


ぎゅ、と歩きながら両手を握った。

でも、私に任されたならやるしかない。

断れるわけがないし、誰かが平和のためにしなければならないなら。


「(がんばらないと)」

「…アヤ部長ー」


奮い立たせていると、鈴を転がしたような無邪気な声が後ろからかかった。

振り返ればキョウカさんが。


「?どうなさったんですか?」

「んー…まだ貴女に用事があるの」

「用事?」

「そう、すぐ終わるから」


そう言ってカツカツと靴を鳴らして近づいてきた次の瞬間、脇腹に衝撃。


「っ、ぐ!?」


廊下の壁に叩きつけられて、そのまま床に崩れ落ちる。

痛みと驚きに震えながら顔をあげれば、氷、なんて表現は生易しいぐらいの冷たい表情と

能力を発動したのか、生えている黒い九つの狐の尻尾にぴんとした狐耳が見えた。


「…自分を何も知らない政府の雌犬のくせに…私のお母さんに心配されてるんじゃないわよ」

「…っ…なんの、話ですか…」

「お母さんは私だけのものなのに…あの人の娘だからって…調子に乗るんじゃないわよ!」

「…、?」


全くわからない話で責め立てられて、どうしたらいいのか痛みの中で困惑していると

言うだけ言ってすっきりしたのか、キョウカさんはお母さんに近づくなと念押しして去って行った。


「っ…お母さん、て…」


多分キョウカさんの言うお母さんは、魔女さんのことだろう。

でも私は会ったこともないし、知り合いですらないのに。

何故、あんなことを言われたのか。


「…(痛い…)」


少し泣きたくなりながら、壁沿いに立ち上がり、なんとか歩き出す。


「…(早く帰って、今日は休もう…)」


いろんなことがありすぎて、少しいっぱいいっぱいだから。


「(…レヴェリーの準備もしなくちゃだべな…)」



背負わされるもの

(キョウカ、どこいってたんだ)
(ちょっと念押し)
(…あんまやりすぎんなよ)
(私の勝手でしょ)

back