今月のインペルダウンの収監者などを纏めた書類をファイルにしまう。

泣いたことで少なからずすっきりし、振り返らず前を向こうと決めたからか

前のようにとはいかないものの、泣く前より楽に、心穏やかな気持ちで仕事に励めるようになった。


「(…私は、私の正義のままに、ここで頑張らなきゃ…)」


ファイルを眺めていると、扉のノック音。


「部長、」

「?はい」

「政府の、カンパニュラ様がいらしています」

「!…カンパニュラさんが…?お通ししてください」


扉の向こうの部下の方に声をかけてからファイルを棚に戻し、入ってきたカンパニュラさんを迎えいれる。


「相変わらずドールハウスみたいな執務室…久しぶりねェ、アヤちゃん」

「はい、お久しぶりです…あ、何か飲みます?」

「いらないわァ。それより聞いたわよォ〜いろいろ大変だったわねェ」

「ええ…でも、もう大丈夫です」


背の高いお客様用に用意してあるソファに腰掛けながら、カンパニュラさんは私に優雅に微笑んだ。

少しだけその笑みに寒くなったのは気のせいだと思いながら、曖昧に笑い返した。


「えっと…それで、わざわざいらっしゃったご用は…?」

「ああ、そうねェ。実は確認したいことがあってェ〜…」

「確認?」


なんのだろうと首をかしげれば、空気をわずかに震わすように笑われた。


「自分の正義を定めたと聞いてねェ〜」

「あ、はい…」

「それはつまりィ…ここに身を捧げると決めた、ということでいいのかしらァ?」

「…そう、なりますね」

「それはとってもいい報告だわァ…嬉しいことねェ」


にっこりとボルサリーノさんによく似た笑顔をするカンパニュラさんに両手を握られた。


「世界のために、ずぅっとがんばりましょうねェ〜?」

「は、はい」


のんびりとしているのに強い声音に思わず頷く。


「ふふ…確認も終わったところでェ、実は情報伝達部長の貴女に用があるのよォ〜…五老星がお呼びでねェ〜」

「!五老星が…?」

「ええ…貴女にしかできないお仕事なのよォ〜…だから一緒に来てくれるわねェ?」

「え、ええ…五老星からのお呼びたてなら…勿論従います」


目を細めて優しげに微笑む顔にまたぞくりとした気がするが、緊張による不安からだと思い直した。

カンパニュラさんの雪みたく白い腕がするっと伸びて、私の頬を優しく撫でて来た。


「そうよねェ…いい子だわァ…さあ、行きましょうか。センゴクさんには言ってあるし」


五老星が貴女をお待ちかねよォ。

その言葉に、緊張が拭えないまま頷き立ち上がった。


「大丈夫〜…貴女には、期待してるのよォ…私たちみーんなねェ…」


甘い声の囁きに、また心臓が震えた。


***


「五老星〜、カンパニュラですゥ〜。ショウガン・アヤ情報伝達部長をお連れしましたわァ」

「…待っていたぞ。久しいな、アヤ」

「は、はい…お久しぶりです、五老星」


敬礼をとり、返事をする。

数える程度しかきたことがないこの場所は、いつきてもひどく緊張して仕方ない。


「息災のようだな」

「はい、おかげさまで…」

「ともかくだ。こちらへおいで」


言われるがままにそばへと行く。

重厚な雰囲気が息苦しい。

一体どんな仕事なのだろう。



秘する思惑

(期待しているのよォ?)
(貴女は世界のために、自分を糧にして働ける子だって)


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