「(ヴェルゴさん、本部に帰ってるならどこに…)」


七武海との会議終わりに廊下を早足に歩く。

大好きな人に早く会いたいから。

暖かい陽に照らされた廊下を曲がるとそこには…


「あ…」

「ん?…あ、久しぶりだなァアヤ。元気にしてたかい?」

「イディオタさん…」

「イディでいいさ。呼びにくいだろ?」


曲がり角の先にあった中庭のベンチにゆうゆうと腰掛けた

ドンキホーテファミリーの幹部であり、ドレスローザの近衛騎士長でもある、イディオタさん…通称イディさんがいた。


「どうしてここに…」

「ボスの付き添いって奴さ。俺には向かない仕事なんだけどな…そっちはなにを急いでたんだい?」

「…会いたい人が、いまして」

「ははーん…なるほどな、好い人ってやつか」


にやりと笑うイディさんは、様になっていた。

細くなる、オレンジの瞳に見入る。


「(お母さんと同じ色だ…)」

「ん?どうした?」

「あ、いえ…同じ目の色の人を思い出して懐かしくなっただけです」

「…そうか。俺と同じ目ってんなら、相当の美男か美女なんだろうな」

「ふふ…そうですね。綺麗でしたよ」


冗談交じりの言葉に少しだけ笑う。

すると


「部長」

「!あ、ヴェルゴさん…」

「…ここにいたんですか、貴女の部下が探していましたよ」

「(お、ヴェルゴ…敬語気味悪ぃな)」

「あら…私の部下が…?…わかりました。イディさん失礼します」


ゆっくりと頭を下げてその場を去ろうとすると、ちょっとまった、と声がかかって、腕を掴まれた。


「…アヤ、あんた海軍にいて幸せか?」

「?…幸せですが…」

「なら…この場所は、本当に好きか?」

「……好きですよ?いきなりどうしたんですか」


困るような質問ばかり急に重ねてくるイディさんに眉を下げて笑い、小首を傾げてしまう。

するとイディさんは少しだけ眉根を寄せて、ぱっと手を離してくれた。


「……あんたがそう言い続けられんのを願ってるよ」

「…そうですか…ありがとうございます」


私の中に沈めたものを知っているような口ぶりが少し怖い。

では、ともう一度小さくお辞儀をして、その場を後にした。



愚者が告げることには

(…何故あんなことを私に告げたのか)
(なにか知ってる?それとも牽制?)
(わからないけれど、私は好きだと言い続けるだろう)

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